無芸大食・読書亡羊~美味しいものと本と旅~

美味しいものと本と旅が至福であり、生きがい。インスタ映えや星の数じゃなく、自分がいいと思えたものとの出会いを綴ってゆきたいです

東大前「万定フルーツパーラー」~長く続いてほしい味~

1月の初めに「喫茶ルオー」さんを訪ねて以来、「万定フルーツパーラー」さんにもカレーを食べに行かなくては、と焦っていました。

何しろ1914年創業の「万定フルーツパーラー」さんは、初めて訪問した時点で既に昭和初期にタイムスリップしたような錯覚を覚えるほどに、昔ながらの佇まいを色濃く残したお店です。タイル模様の床を筆頭に、当時はさぞかしモダンだったであろうハイカラな洋風建築、骨董品のようなコーヒーミルやレジスターと歴史を感じる店内同様に、店主の方もご高齢なのです。聞くところによると、ご自身の代で店はおしまいにされる予定だそうで、閉店してしまう「いつか」の時に後悔する前に、カレーライスを食べておかなくては!と焦燥感が募っていたのでした。
 
万定フルーツパーラー

幸いなことに店主(女性)はご健在で、以前と変わらずにこやかに接客して下さいました。内装も昔のまま。変わらないということの安心感に、しみじみと浸りました。

◆ カレーライス
DSC_0074

「万定フルーツパーラー」さん
カレーライスは、小麦粉を焦がして作る、独特の風味と苦みがあるタイプです。お肉以外の具はペースト状にすりおろしてあるので、しゃばしゃばとしたつゆだく風。硬めのごはんにカレールウを浸すかの如し食感で、私でさえあっという間に完食してしまえるので、腹ペコ大学生なら大盛りでもぺロリでしょう。苦みと香ばしさがたまらず、クセになる味わいです。

◆ バナナジュース
DSC_0075

店名の通り、フルーツパーラーなので、ジュースもオーダーしてから作り、出来たてを供してくださいます。夏場はすきっと爽やかなレモンスカッシュもおすすめですが、この日はバナナジュース。余計なものの入らない、フレッシュで素朴な美味しさです。

日々色々なお店を巡り歩いてますが、「変わらず続いていること」の凄さを、最近よく感じます。自分と同じようにお店の方々も年を重ねていかれる中で、様々なライフイベントや社会の変化にも遭遇するわけですが、それでも尚「いつ行ってもそこにある」お店と味を守り抜き、そして多くの人に愛される魅力を保ち続けていくことの、途方もなく努力のいる行為に頭が下がります。

お客である私が「なくなってほしくない」などと簡単に言うのは、口幅ったくもありますが、一日でも長くお店が続くことを願いつつ、頻繁に足を運び、その比類ない味を記憶に留めることが、私に出来る唯一の手段なのかもしれません。
ごちそうさまでした。

2016年1月某日の旅先: 東大前「万定フルーツパーラー」さん 

万定フルーツパーラーフルーツパーラー / 東大前駅本郷三丁目駅春日駅
昼総合点★★★☆☆ 3.5

★ カレー関連記事
下北沢「カフェ般゜若」さん