無芸大食・読書亡羊~美味しいものと本と旅~

美味しいものと本と旅が至福であり、生きがい。インスタ映えや星の数じゃなく、自分がいいと思えたものとの出会いを綴ってゆきたいです

約束の地(沢木冬吾)~読後所感~

※あくまでも個人的な感想です。一部作品のあらすじやテーマに触れている箇所がありますので、
まだこの本を読まれていない方は、以下記述に目を通される際にはどうぞご留意ください。

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元刑事が僻地にある別荘の管理人として潜入捜査を請け負うことから始まるミステリー。
 
主人公の元刑事を筆頭に、潜入捜査の目くらましのために彼と共に疑似家族として同居する若い男女など、登場人物たちがいずれも魅力的です。暗い過去と孤独を抱えていた彼らが、探り合いからスタートして不器用ながらも徐々に心を通わせていく様子、お互いの存在感に戸惑いつつも、やがてその存在によってそれぞれの孤独が薄れていく描き方にぐっときました。

それと並行して描かれる、警察犬のハンドラーであった主人公が虐待されていた犬に愛情を寄せ、信頼を築くまでのストーリーも静かな感動を呼びます。結末へと繋がる伏線が張られ、飼い犬を家に置く私としては最後の数ページは涙なしには読めませんでした。
 
クライマックスは謎解きというよりも活劇風のアクションの要素が大きく、まるで映画を観ているようなスケールの大きな展開となりますが、全編通してハラハラしたり、爽快な気分になったり、じんわり泣けたりと様々な要素が詰まっていて、飽きずに一気読みしてしまいました。面白かった!