無芸大食・読書亡羊~美味しいものと本と旅~

美味しいものと本と旅が至福であり、生きがい。インスタ映えや星の数じゃなく、自分がいいと思えたものとの出会いを綴ってゆきたいです

西荻窪「焼きとりよね田」~みんなちがって、みんないい。~

西荻窪の南口は、ご存知大衆酒場が軒を連ねるのんべえ天国。自由業の方や悠々自適の年配者が多い土地柄だからか、早い時間から夜を徹して途切れることのない賑わいが連日見られます。韓国、タイ、台湾、沖縄、インドとバラエティに富んだお店のラインナップもこの街らしい気がしますが、王道の焼き鳥ならば、何といっても「戎」さん「よね田」さんが、双璧をなす西荻窪の二大巨頭でしょう。

口開けは16時ですが、店内外はあっという間に満席に。久しぶりの「よね田」さんに、はやる気持ちを抑えてオーダーするは、必食白レバー、名物のジャンボつくね鳥刺しはじめ各種の串焼き。特につくねは、そのナリゆえに焼き上がりまでに時間がかかるので、早めにお願いしておきます。
焼き上がりを待つ間のつまみは、牛スジと大根の煮込み特製胡麻ダレ生キャベツポテサラなどを。

◆ 牛スジ大根
ほろほろの牛スジ以上に、芯までしっかりダシの染み込んだ大根と厚揚げが絶品。 しっかり塩味が効いているのも飲み屋の一品ならでは。一杯目のビールは早くも空になる勢いです。 
 
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白レバー(炙り&焼き)
炙りはレアに近く、舌の上にとろりととろけた後に残る深い甘味にうっとり。焼きは更に中に火が通っていて、ぷりっとした歯ごたえとレバー特有のふんわり感を楽しめます。どちらも甲乙つけがたい美味しさです。 
 
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◆ 鳥刺し
この量で「小」サイズなのですから、「よね田」さんの太っ腹具合がわかろうというものです。適度な弾力があって、胡麻油と塩だけの味付けが瑞々しくあっさりとしたささみの甘味を引き立てます。
 
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◆ 正肉・ネギマ
これまたずっしりと持ち重りのするボリュームです。お店の方が自ら「うちのは大きいんで」と声をかけるほど、これが「よね田」さんの真骨頂!気前の良さだけでなく、味ももちろん折り紙つき。香ばしい焼き目がついた引き締まった肉をぐぎゅっと噛み千切ると、確かな旨味とジューシーな肉汁が感じられ、とろっと甘くなるまで焼かれた葱と共に咀嚼していると、「あぁ~焼き鳥食ってる!」という多幸感でいっぱいになること請け合いです。

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◆ 胡麻ダレ生キャベツ
肉が続いてちょっとダレてきたときの、抜群の口直し。玉葱か何かの野菜のすりおろしが入っているのかと思われますが、適度なコクと酸味がある胡麻ダレとさくさくのキャベツが口の中をさっぱりさせてくれる名脇役。ちょっとクールダウンした後に、また次の串に挑む気持ちを盛り上げてくれます。
 
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◆ 馬刺し
「よね田」さんが面白いのは、焼き鳥屋なのにマグロも名物で、新鮮な中落ちなんかが食べられるところ。お隣さんは早々に注文していましたが、私たちはこの日はマグロはパスして馬刺しにしました。肉厚で新鮮な馬刺しは、鶏とはまた違ったすっきりと透明感のある味わいです。
 
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◆ 砂肝・つくね
さくさくっとした歯応えが小気味良い砂肝に続いて、出ました、名物巨大つくね!ご覧の通り、串を4本も打たなければ支えきれない大きさで、ちょっとしたハンバーグといった風格。
 
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しっかり火は通っていますが、ゴツゴツとした見た目ながら中はジューシー。軟骨のコリコリしたアクセントも楽しく、目玉焼きの黄身をとろ~っと絡めて頂くともう・・・。
 
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これでなんと210円、目玉焼きのトッピング100円をプラスしても310円です。この日は結局、飲んで食べて一人3000円以下でした。バチがあたりそうな安さです。感謝!

お値段のことを持ち出すと、こんな良心的な店があるなら、気取った店で大枚はたいて焼き鳥を食べるなんてけしからん!と言われる方もいるのですが、そこは仕入れている材料の違いや料理の品数、サービスや雰囲気、概してお店の目指す方向性が違うのですから一概にどちらがいいとは言えません。「バードランド」さんや、「今井」さんのワクワクするような緩急あるコース仕立てや、「76vin」さんのワインに合わせたフレンチ仕立ての焼き鳥は、また全然違った魅力を備えているのですから。

私などはむしろ、焼き鳥ひとつとっても、手頃な値段でサクッと食べられるお店から、ゆっくりと少しずつ堪能できるお店まで、無限のように選択肢がある贅沢を嬉しく思います。食べることに貪欲だからこそ、味わうこちら側だって、お値段や雰囲気や料理の名前などに惑わされず、美味しいと感じる自分の舌を信じてジャッジしたい。そうやって出会ったお気に入りの店の数々から、その日の気分やTPOに合わせたお店を的確に選び抜いて、使い分けていきたい。そう思っています。

「よね田」さんは、お尻が痺れてきそうな椅子や、人が一人やっと通れるくらいの狭い店内、立ち込める熱気やアルミのお皿など、全てがたまらなく「ザ・焼き鳥屋さん」らしく、庶民的な魅力で溢れています。客筋も、文学談義を交わすおじさん、熱く映画論を語る青年、塩辛声がシビれる老婦人など、どことなく西荻窪らしい顔ぶれが揃っていて、気分はいや増すばかり。この日はこういう空気に浸りながら焼き鳥を頂きたかったので、大満足の夜となりました。
ごちそうさまでした。

2015年8月某日の旅先: 西荻窪「焼きとりよね田」さん

焼とりよね田焼き鳥 / 西荻窪駅
夜総合点★★★★ 4.0