高円寺「ツバメおこわ」~気分次第で小トリップ~
高円寺の北口から歩くこと10分弱、ショッピングロード沿いにあるお店なのですが、茶色いひさしにツバメのイラストが描かれたお洒落なカフェ風の外観で、「ベトナムコーヒー」というのぼりで目指す店であることがわかります。コーヒーを飲みにふらりと立ち寄りたいカフェといった、気負いのない気軽な雰囲気が好ましく感じました。
メニューには、蓮の葉で包んだスタンダードなハスの実おこわ、鶏肉やモツなど味の濃いおかずを乗せたおかずのっけおこわ、デザートにもなりそうなココナツミルク風味のピーナッツおこわなど、店名通りの看板メニューのおこわがずらり。この日は同行者と共に、ハスの実おこわ、豚とハム煮おこわの2つをシェアして頂きました。
◆ ハスの実おこわ
まず独特の蓮の葉の香りが食欲をそそります。一緒に蒸されている蓮の実のコロンとした感じも可愛く、思わず美味しそう!と声をあげてしまうビジュアルです。
まず独特の蓮の葉の香りが食欲をそそります。一緒に蒸されている蓮の実のコロンとした感じも可愛く、思わず美味しそう!と声をあげてしまうビジュアルです。
十字型の切り込みから箸を入れると、挽肉や干し海老、人参、蓮根、きくらげなど中は具だくさん。お好みで、とタレが添えられてきましたが、旨味の出る食材がたっぷりなのでこのままで十分美味しく、柔らかくもちもちしたおこわと、しゃきっ、コリッとした中の具の食感が楽しくて、ついついもう一口と箸が進んでしまいます。
◆ 豚とハム煮おこわ
おこわの上に豚の角煮とハム煮、そして大きな厚揚げ煮と煮卵がのった、アジアでよくみかける「おかずのっけ」のおこわ版といった見た目。味付けも私たち日本人には馴染みのある甘辛い煮物味で、初めて食べるのになんだか懐かしい感じがしました。豚角煮は箸ですっと切れるほど柔らかく、厚揚げもしっかり中まで味が染み込んでいて、さりげないのにしみじみ美味しい。こちらは柔らかい具の食感がおこわに良く馴染んでいて、とても食べやすく感じました。
アジアの甘じょっぱいおかずは、美味しいのだけど甘さが際立ったりこっくりし過ぎていたりして、食べた後に舌が疲れてしまうことがありますが、元々のベトナム現地の味がそうなのか、店主の方の腕のなせる業か、どちらのおこわも絶妙な味加減で、甘味や塩味よりも旨味の余韻が残ります。
長粒のお米はインディカ米でしょうか?おこわなので確かにもっちりした食感ではあるのですが、日本のおこわのように食べた後にどっしりともたれることがないように感じました。おこわにもついてくる箸休めのピクルスとさっぱりした蓮のお茶も、食後の清涼感を呼んでくれます。
ココナッツミルクゼリーや焼きバナナなどアジアらしいデザートも数種類ありましたが、せっかくベトナム気分が盛り上がっているので、ここは断然チェーでしょうパンダ豆の温かいチェーと、新作という冷たいミルキーチェー、そしてミルク入りのベトナムコーヒーをオーダー。
◆ パンダ豆の温かいチェー
パンダ豆って初めて聞きましたが、運ばれてきてネーミングになるほどと納得。種皮が白と黒の模様になっていてパンダみたいなのです。芋豆などの澱粉系独特のねっとり優しい甘さに、香ばしいピーナッツが良いアクセントです。
お店の中がほんの少しだけ薄暗い感じなので、地元の人が行きかう通りの賑やかさや明るさを眺めていると、ここが高円寺であることを忘れ、異国の地で東南アジアの太陽の下から涼しい店内に逃げ込んで、のどかな午後を過ごしているような気分になります。
恐らく店主の方のご趣味なのでしょうか、様々な本や雑誌、写真集などが配してあり、でも決してごちゃごちゃと押しつけがましい雰囲気ではなく、好きなものに囲まれたお気に入りの空間にお邪魔させてもらった心地良さがあります。店内に流れるラジオのBGMや、いい感じで放っておいて下さるお店の感じなど、不思議と落ち着ける空間で、甘いベトナムコーヒーを味わいながら、いつまでもその空気に身を委ねていたくなりました。
個人的にはベトナム料理は大好きで、鈴木珠美さんの西麻布のお店「Kitchen」さんや、同じくプロデュースされている東京現代美術館内の「Cafe Hai」さん、高田馬場の「バインミー☆サンドイッチ」さんなどはよく利用しているのですが、改めて思い返してみると、ベトナム料理を頂くときもついついフォーやお粥をオーダーしてしまうことが多く、日本でベトナムおこわを頂くのは初めての体験だったかもしれません。
新しい味に出会えて、そして美味しい数々を味わうことが出来て大満足でした。ごちそうさまでした。
新しい味に出会えて、そして美味しい数々を味わうことが出来て大満足でした。ごちそうさまでした。
2015年6月某日の旅先:高円寺「ツバメおこわ」さん