無芸大食・読書亡羊~美味しいものと本と旅~

美味しいものと本と旅が至福であり、生きがい。インスタ映えや星の数じゃなく、自分がいいと思えたものとの出会いを綴ってゆきたいです

代々木上原「ミ・チョリパン」~自由研究ことはじめ?~

現在住まう街を心から愛しているけれど、仮に引越をするならば、代々木上原に住みたい。お隣の代々木八幡や東北沢も含め、美味しいものがたくさん揃う街ですが、わけても、「クリスチアノ」3店舗のポルトガル料理始め、モロッコ、スペイン、ブータンチェコベトナム、台湾、閉店してしまったブルガリアカフェまで、バラエティ豊かな各国料理があるのが魅力的で、懐が深い街だなぁと感じます。アルゼンチンのソウルフード、チョリパンが食べられる「ミ・チョリパン」さんも、この街ならではのお店。

チョリパンの目玉はなんと言っても肉々しく存在感溢れる牛肉のチョリソーだけれど、スパイシーなソース「チミチェリ」と、オレガノビネガーをたっぷりかけて頂く、この食べ方そのものが私は好きです。
 
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ついつい欲をかいてサルサや野菜もどっさり載せて、手がべったべたになってしまうのだけれど、ちょっとモソモソ感のあるパンに、具材がじんわり染みて一体感が出る感じがまたいいのです!

チョリソーから出た脂や、野菜とチミチェリとビネガーが渾然となったソースがえもいわれぬ美味しさで、余さず食べてしまおうとすると一度もチョリパンから手が離せなくなってしまう・・・。もうちょっとスマートに食べれればいいのでしょうけれど、こういうワイルドな食べ方の方がより美味しく感じる食べ物ってありませんか?

なかなか頻繁には行けず、家で再現できないかと試してみたけれど、当然のことながらホットドッグとは全く似て非なるもの。チョリソーはあのゴツゴツした牛肉の粗挽きでスパイスが効いていないとダメだし、パンだっていい意味でちょっとパサパサしたドライな感じでないと、ちっとも合いません。そりゃそうだ。
 
こういうお店は、食べたい時にすぐにふらっと立ち寄りたいので、近所にあったら嬉しいなぁ。アルコールとの相性もぴったりなので、チョリパンとビールでイイ感じに酔っぱらってから、のんびりと夜風に吹かれながら歩いて家路に着くのは最高だろうなぁ・・・。

「ミ・チョリパン」さんは、オープン当時からあちこちで紹介されているのでその存在はすっかり知られていますが、ニッポンの(とりわけトーキョーの?)すごいところだなぁとつくづく思うのは、一般的に馴染みが薄い国の、しかもローカルフードを広めようという人がいて、それが瞬く間に日常のシーンとして定着してしまうところです。だって、アルゼンチンの人がこれを食べている姿を実際に目にした人なんて、はたして周りにどれだけいることでしょう?

けれど、私のような非インターナショナルな人間にとっては、「ミ・チョリパン」さんのようなお店を訪れて「食」のフィルターを通して他国を知る経験って、結構大事なことだと思っているのです。たとえばアルゼンチンが牛肉消費量が多い国だということは、知識として頭に植えつけるよりも、こうして「チョリソーが豚肉じゃなくて牛肉なんだ!」と、体感したことの方が、ずっと忘れ難くなるものです。

一度でも訪れた土地で起こった事件や災害はを他人事とは思えなくなるように、身をもって体感した「何か」は、自分自身のどこかにしっかりと根づき、自分と関係のある「何か」に変化します。世界の国全て訪れることは難しくても、食であれ音楽であれスポーツであれ、とっかかりはなんでも良く、とにかく好きなジャンルを入口にして、他国の扉を開けることは、とても大事なことだと思うのです。自分以外に興味を持たないこと、隣人に無関心でいられることが、理解できないものへの恐怖や不信を生み、それがひいては差別や戦争などに繋がるのだと思うからです。

何だか大風呂敷を広げてしまいましたが、そんな理屈を抜きにしても、「知らなかった国の味を、自分の舌で体感する」そのものが、単純にワクワクするし、新鮮な驚きに満ちています。もしも私に学齢期の子供がいたならば、夏休みの自由研究だと先述のように一席ぶって、都内の各国料理レストランに連れ歩いてしまうかもしれません。幸か不幸か当面そんな機会はなさそうなので、提出するアテのない「世界の食文化」について、一人コツコツと研究を進めることにいたしましょう。

ごちそうさまでした。
 
2015年7月某日の旅先: 代々木上原「ミ・チョリパン」さん

ミ・チョリパンパン・サンドイッチ(その他) / 代々木上原駅代々木八幡駅代々木公園駅
昼総合点★★★☆☆ 3.5