無芸大食・読書亡羊~美味しいものと本と旅~

美味しいものと本と旅が至福であり、生きがい。インスタ映えや星の数じゃなく、自分がいいと思えたものとの出会いを綴ってゆきたいです

青森「六兵衛」~だから旅はやめられない~

旅の1日目は青森市内泊だったので、青森駅からも程近い居酒屋「六兵衛」さんで夕食を頂きました。
市内には青森ならではの郷土料理を頂けるお店はたくさんあって、ねぶた祭りの人形灯篭を模した華々しい店構えや、津軽三味線の音楽をかき鳴らしながらの威勢い良い呼び込みなど観光客向仕様も多く、こちらも元気があれば楽しめるのですが、この日は少々遠慮したい気分。
「六兵衛」さんは郷土色が強すぎず、地元の方に人気の美味しいお店と聞いて伺いました。

階段を下りた地下にある「ザ・居酒屋」風のお店は、いかにも地元の常連さんが通いそうなロケーション。
カウンターには既に常連さんと思しき年配の先客もいらして、私たちのようなフリの客は居づらいかしらとちょっと気後れしていたのですが、どのお客さんにもつかず離れずの快いお店の方の対応で、アウェイ感を感じることなく、落ち着いて食事を楽しめました。会社帰りのOLさんや、職場仲間のグループなど次々にお客さんがやってきて程なく満席。噂通りの人気店のようです。

カウンターの向こう側の寡黙で渋い店主の方は、こういう肩の凝らないお店で厨房を預かる人らしく、美味しそうなものを生み出しそうな雰囲気むんむん。その期待は裏切られることなく、目が迷うような種類豊富なメニューから選んだ品々はどれも美味しく、舌鼓を打つことしきりでした。
 
まず、突き出しのツブ貝の煮付けの、煮汁の美味しさに陶然。身を出した後の殻まで吸い尽くしたほど旨味ある煮汁で、この後のお料理への期待が一気に高まりました。
やはりお魚の美味しさはピカイチで、ぷりぷりの鯵のたたき、どれも量がたっぷりのお刺身盛り、柔らかくしなやかな歯応えの身欠きにしん等、海の幸を存分に堪能しました。

青森名物貝焼き味噌は初めて頂きましたが、このお店が初体験で良かった!貝柱の甘味がコクのある味噌とふわふわ卵に絡んで何とも言えない旨味。もちろんお酒との相性もぴったりです。
茄子焼きや、じゃがバターの塩辛添えなど、何でもないような居酒屋メニューもしみじみ美味しい。
 
そして今思い出しても忘れられないのは、店主オリジナルだという大根おろしと出汁で頂くゲソ揚げ。これが美味しかった!揚げ出汁豆腐のゲソ版といったところでしょうか、香ばしくサクッと揚げたゲソが入ったどんぶりに、なめこ三つ葉入りの出汁が張られ、たっぷりの大根おろし、あられや葱などのトッピングがかかった一品です。味つけ卵が添えられているのも心憎い。

漠然と東北の料理は味が濃いというイメージがあったのですが、少なくともこちらのお料理はほっとする味わいのものが多く、出汁の旨みが際立つもお酒が進む絶妙な塩加減でした。しかも、どれもこれも量が多いのに一皿500円以下という超良心価格です。地元の方に人気なのもむべなるかな、です。

朝から東京→十和田→青森の移動で疲れていましたが、美味しいお料理とお酒で胃も心も満たされ、旅の一日目は大変素晴らしい締めくくりとなりました。初めての土地で初めて出会う味、わざわざ出掛けないと巡り合えないこんな出会いも、旅の醍醐味ですね。
悔しかったのはスマホの不具合のせいで、印象的なお料理の数々を写真に収められなかったことだけれど、私の味蕾と海馬には、どれもくっきり刻まれています。また青森市に旅する機会があったら必ず再訪したいと思います。ごちそうさまでした。

2015年7月某日の旅先: 青森県青森市「六兵衛」さん

六兵衛居酒屋 / 青森駅
夜総合点★★★☆☆ 3.5