無芸大食・読書亡羊~美味しいものと本と旅~

美味しいものと本と旅が至福であり、生きがい。インスタ映えや星の数じゃなく、自分がいいと思えたものとの出会いを綴ってゆきたいです

荻窪「えだおね」~ほしかったものはすぐそばに~

唐突ですが、ベトナムサンドウィッチのバイン・ミーが大好きです。コクのあるレバーペースト、甘酸っぱいなます、爽やかな風味のパクチーバゲットでサンドされた、あんなにも素敵な組合せの妙があるかと常々感じているのですが、世界各国料理が集う東京でさえ、出会える場所が限られているのは一体どういうことでしょう。

数多あるベトナムエスニック料理店でも滅多にメニューには載っておらず、フォーや生春巻きと比べるとどうも影が薄い気が…。やはり元来ファーストフードだからなのでしょうか?どうしても食べたい時には、専門店では先駆け的存在の高田馬場「バインミー☆サンドイッチ」さんに伺うか、自分で作るのですが、どこか他に手軽に食べられるお店はないものだろうかと思っていた矢先。近所に、しかもパン屋さんが作るバイン・ミーがあると聞いて、荻窪の「えだおね」さんに伺いました。
 
店内は、ソフト系からハード系までのパンがずらりと並んだテーブルを中央に、ゆったりと席が設けられた明るい雰囲気。人気のパン屋さんの中には、こじんまりしたお店ゆえに次に並んでいる人が気になって、ゆっくりパンが選べず不完全燃焼に終わることもありますが(店内スペースの都合上、仕方がないことは理解しているものの)、「えだおね」さんの店内は、じっくり吟味しながらパンを選ぶには最適な空間です。

買ったパンは店内だけでなく、外のウッドデッキのテラス席でも頂けるとのこと。テラス席はきちんと日除けが完備されており、表通りから脇に入った路地なので、通行人の目も気にならずのんびり出来そうです。

先にアイスコーヒーを運んできてくれた店員さんが、「只今サンドイッチをお作りしておりますので、すぐにお持ちしますね」と声をかけて下さった後、ほどなく作りたてのバイン・ミーがやってきました。
 
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外の皮目がぱりっと香ばしいフィセルに、厚切りのパテがたっぷり、なますと野菜がぎっしりで、見た目も美味しそうな美人さん。なますもパテも自家製だそうですが、全てがこのフィセルでバイン・ミーを作るためにきちんと考え抜かれた具材なのでしょう、そのバランスの良さは抜群!
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パンの香り、パテのコク、なますの仄かな甘味と酸味、パクチーやミント、小葱の香草類の清涼感など、個性あるそれぞれの風味がきちんとひとまとまりになっていて、この一体感がサンドウィッチの美味しさなのだと感じます。フィセルの内側がなますやソースの水分でしっとりするも、食べ終えるまで外側はパリっとしたままなのも、このパンだからこその味わい方だなぁと、なんだか嬉しくなりました。

日本中を席巻しているパンブームで、今や全国津々浦々、どこの街にもブーランジェリーやベーカリーなどパン専門のお店があって、世界中のパンを食べられる贅沢な環境となりましたが、こうやってパンの楽しみ方を提案してくれるベーカリーカフェは、意外と限られているものです。
 
「えだおね」さんバイン・ミーの洗練された姿と味は、ベトナムローカルのそれとはまた違ったものですが、正にこちらのオリジナル。「このパンを是非こうやって美味しく食べてほしい!」という、作り手の方の思いや自信が伝わるような、美味しい美味しいバイン・ミーでした。

この日はたまたまレジの脇、厨房の手前の席に座ったのですが、レジの方の細やかな接客ぶりや、活気ある厨房の様子を拝見して、さらに好感度が急増。ペットとの散歩のついでにテラスで休憩されるお客さんや、買い物ついでに寄ってお気に入りをひとつだけテイクアウトされるお客さんもいて、地元に愛されているお店なんだなと感じました。強い日差しの中パンを買いに来たご年配のご婦人に、レジの店員さんがすかさず、椅子をすすめてイートイン席用のお水を差し上げていたのが印象的でした。

この感動をお裾分け、と家人にもお土産に幾つかテイクアウト(もちろん私も味見するのです)。キャベツと黒胡椒のリュスティックは、火が通ったキャベツの甘味と、もちっとした生地の歯応えがぴったりで、ピリリと効いた黒胡椒と、ちりっと焦げたキャベツの部分がいいアクセント。ワインにも合うパンです。
 
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合鴨スモークのサンドウィッチは、合鴨スモークのしっとりとした柔らかさにまず驚きました。黒胡椒入りのリュスティックが、合鴨のまろやかな脂気ある旨みを引き立てつつ、バルサミコソースの風味もばっちり受け止めていて、これもバランスの良いサンドウィッチです。
 
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新商品だというヴィエノワは、バニラ風味の練乳クリームをサンドした、いわゆるミルクフランス風。ミルクフランスが大好物でパン屋さんで見つけると必ず買ってしまうのですが、「えだおね」さんのものは、ややセミハードな生地にあっさりとした甘さのクリームで、最近頂いた中では1番好きなタイプ!
 
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チョコマカダミアはおやきみたいな素朴なルックスに反し、甘さ控えめのダークチョコレートと香ばしいマカダミアナッツが、意外とブランデーやウイスキーにも合いそうな大人味です。
 
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バイン・ミーが道しるべとなって、「えだおね」さんのような、私好みのパンが揃うお店に出会えました。土日祝日限定の、胡麻をまぶしたパンを使ったサバサンドを始め、食べてみたいと思うパンが沢山あったので、当分こちらに通う楽しみは尽きないことでしょう。もちろん、本命のバイン・ミーも忘れずに。
ごちそうさまでした。

2015年8月某日の旅先: 荻窪「えだおね」さん

えだおねパン / 荻窪駅
昼総合点★★★★ 4.0