中野「サルサ・カバナ」~えせラテンの血が騒ぐ~
父は終戦前の生まれなのですが、昔からかなりの外国かぶれで、若い頃から妻子を置いて海外旅行に出掛け(ひどい)、洋画と洋楽を愛して止まず、年を取っていろいろと覚束なくなった今でも、海外ニュースを聞いて時事英語の学習に勤しんでいます。どうやら彼は「語学を学ぶ自分」が好きらしく、私が子供の頃はスペイン語にハマっており、朝起きたら「Buenos dias!」、出がけの挨拶は「Hasta la vista!」(後に観た「ターミネーター」でシュワルツネッガーがこのセリフをつぶやいた時にはたまげた)、就寝前には「Hasta manana!」と高らかに叫ぶ、ちょっとおかしな家庭でした。
だからというわけではありませんが、スペイン語はやはり耳馴染みが良く、スペイン語圏の音楽や食べ物には割と早くから親しんでいて、パエリアもワカモレもタコスも、みんな父のテキストで覚えました。いかにも子供が喜びそうな響きのソパ・デ・アホ(にんにくのスープ)なんて、忘れるはずがありません。その後のアメリカ滞在時には「タコベル」でテクス・メクスの洗礼も受け、私という人間は、日本人のDNAに加えて、ほんのちょっぴりのラテンの刷り込みで出来ています。
南米のバーを思わせるラテンの香り漂う店内ですが、お酒のためだけのお料理にあらず、きちんとしたメキシカン&テクスメクスフードありきのお店です。下戸の同席者も楽しめる、ノンアルコールモヒートなどのカクテルが充実しているのも嬉しいポイント。店員さんも物腰丁寧で、「これ旨いですよ!」と言いたげな笑顔で、お料理をサーブして下ったのが印象的でした。
まずはサボテンの若葉とトマトのサラダ仕立てをつまみながら、コロナで乾杯。茎わかめのような見た目のサボテンは、焼き茄子のような、アロエのような、わずかな弾力のある歯応えが楽しく、柔らかい繊維質にドレッシングがよく染みています。甘~いトマトと、玉葱のシャキシャキも良いアクセント。
クリスピーなトルティヤチップス、ねっとりとしたワカモレ、ぐにゅっと弾力あるタコが、口の中で踊ります。軽い飲み心地のコロナは早くも空に。おかわり!
万願寺唐辛子のクリームチーズ詰め揚げ。こういうお料理は初めて頂きましたが、本来は、ハラペーニョの中にチーズを詰めて焼く、チリ・リアノスという料理をアレンジしたものだそうです。大ぶりサイズの万願寺唐辛子の中にぎっしりクリームチーズが入っているので、クドさを覚悟して頂きましたが、肉厚の万願寺唐辛子の皮の瑞々しさがチーズの濃厚さをほどよく中和していて、意外にもあっさりで美味しい!
ラテンの国のお料理というと、なんとなくギラッギラしたものをイメージしてしまいそうですが、そもそもメキシカンは、肉や魚と同じくらい豆やコーン、サルサやワカモレなどの野菜が多用されていてバランスも良く、辛さは控えめながらライムやトマトの酸味であっさり頂けるものも多いので、意外にもヘルスコンシャスな料理ではないかと思うのです。
「サルサ・カバナ」さんのお料理自体も、お酒に合わせてパンチが効いたアレンジではないかと思いきや、脂っぽさやクドさとは無縁の、盛り付けもお味も洗練された食べやすいものばかりでした。普段からメキシカン&テクス・メクスに親しんでいる方でも、初めての方でも、美味しく頂けるお料理だと思います。
お腹に余裕があれば、鉄板ステーキや、カラマリ、エンチラーダなども食べたかった・・・。石臼鍋を使った溶岩チーズ鍋も名物だそうですので、涼しくなったらこちらもぜひ試してみたいと思います。
ごちそうさまでした。Estaba muy rico!
2015年8月某日の旅先: 中野「サルサ・カバナ」さん
サルサカバナ 中野店 (メキシコ料理 / 中野駅、新井薬師前駅)
夜総合点★★★☆☆ 3.5