無芸大食・読書亡羊~美味しいものと本と旅~

美味しいものと本と旅が至福であり、生きがい。インスタ映えや星の数じゃなく、自分がいいと思えたものとの出会いを綴ってゆきたいです

中野「アチャラナータ」~決め手は魚とココナッツ~

日本在住のスリランカ人の方が、鰹節を代用して祖国のカレーを作っているシーンをテレビで観てから、スリランカ料理に興味津々です。そこで、「アチャラナータ」さんのランチを食べに伺いました。
 
中野駅の南口を出てまもなくの雑居ビル2階にあるお店は、狭い階段を上がった鉄扉の向こうに。中の様子が見えないのでちょっと不安になりましたが、入ってみれば低めのソファ席と小さなテービルが並んだ元スナック風のコジーな設えで、入り口脇のキッチンから「いらっしゃいませ」の声にがかかり、ひと安心。

ランチはワンプレートミールスで、日ごとに内容が変わるようですが、この日は豆カレーの他に、チキンかポークのカレーを1種選択、ソヤミート、ポルサンボル、パパダム、ジャガイモ炒めのワンプレート。
店主の方がそれぞれどんなお料理なのかを丁寧に説明して下さったので味のイメージもつかみやすく、オプションで追加できるアンブルディアル、茄子のモージュ、ルヌミルス、エッグアッパーも、全て試してみることにしました。
 
◆ エッグアッパー 
エッグアッパーは、ココナッツと米粉の生地を半球状に広げたところに卵を落として焼いたもので、彼の地では朝食の定番だとか。どうやって食べたらいいかと考える間もなく、店主の方が「切れ目を入れて、端からくるくると巻いて口に入れる」のだと教えて下さいました。なるほど。

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なんだか目玉焼きの端のチリチリが大きくなってしまったような見た目ですが、卵部分はターンオーバー風に両面火が入った状態。生地の部分はココナッツの微かな甘みを感じる優しい味で、ドーサのようにサクッとした面白い食感。あっさりしているので確かに朝食向きかもと感じていたら、現地ではルヌミルスやサンボルなどの辛いペーストをつけて頂くんですって。 

ミールス
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お待ちかねミールスは、スリランカの味が色々と楽しめるのが嬉しい一皿です。
全部をまんべんなく混ぜて食べるのが現地の流儀だそうで、まずそれぞれの味を確かめてから、おずおずと混ぜ出した私たちに店主の方の「もっとしっかり混ぜて食べるのがいいんですよ」とのアドバイスが。ナイルさんみたいだ(笑)。お話好きの方らしく、ちょうど他のお客さんが少ないタイミングだったこともあり、色々とスリランカ料理や作法について教えて下さいました。

ライスの左側が、この日選んだポークカレーです。スリランカは殆どが仏教徒、次いでヒンドゥーイスラムキリスト教徒の割合だそうです。だから豚肉のカレーもアリなわけですね。スパイスは辛味よりも香ばしさが印象的で、黒胡椒のピリッとした風味が効いた穏やかな辛さと、胃にもたれない軽やかさがとても食べやすく、旨味深いカレーでした。北インドのようなこってりコクのあるカレーとも、南インドのようなシャープな辛さのカレーとも違うのだということが良くわかります。

ライスの右側豆のカレーはいわゆるダルカレーで、レンズ豆独特の粉っぽい食感と、スリランカ版の鰹節モルディブフィッシュの味わいに、じゃがいも入りのお味噌汁のようなイメージを抱きました。
 
豆のカレーの手前がポルサンボル。ココナッツファインと玉葱、スパイス、モルディブフィッシュの和えもので、インド料理で頂く玉葱のアチャールに似ていますが、おかずっぽさが強いのは鰹節効果でしょうか。その手前のころころ丸いものがソヤミート、プレートの一番奥のおせんべいのようなものがパパダムです。

印象的だったのは、オプションの3種です。
プレートの正面にごろっと鎮座しているアンブルディアルは、スリランカ版魚の角煮とでもいいましょうか、マグロやカツオの角煮のような食感で、ほのかな酸味とスパイスが香るおいしいおかずです。
 
パパダムの手前に盛られた茄子のモージュは、素揚げか揚げ炒めでくったり火を通した極細切りの茄子を酸味のきいたスパイスで炒めてあるようで、茄子の油みそ(沖縄の豚肉を使ったものではなく、信州の味噌炒め風のほう)に似た美味しさがあります。
 
ライスのてっぺんに載った赤いフレーク状がルヌミルス。唐辛子とモルディブフィッシュフレークを炒ったふりかけのようなもので、これもポルサンボルと共に、スリランカ料理の定番だそうです。

ミールスを頂いただけでスリランカ料理を語るのはおこがましいですが、何と言ってもココナッツとモルディブフィッシュのフレークが2大ポイントであることは、間違いなさそうです。ココナッツは、ミルクやペーストではなく実を削ったファイン状のものを使っているため、タイ料理で使われるそれのような濃厚さとは違い、ほのかな甘みとマイルドなコクが生まれているのも印象的でした。スパイス使いにおいても、スパイシーさよりも香ばしさが勝っているので、辛いものが苦手な方でも、スリランカ料理は馴染みやすいのではないかと思いました。
 
そして、モルディブフィッシュフレーク。ちょっと乱暴なこじつけですが、この日のワンプレートミールスのおかずは、魚の煮付け、茄子の油味噌、ふりかけ、味噌汁…どれも間違いなくご飯が進む日本のおかずを連想させるものばかり。これらのお料理の旨さは、鰹節の旨味をDNAレベルで知る私たち日本人にとってもどこか懐かしい味わいでもあり、スリランカという国への親近感がぐっと縮まりました。
 
◆ ミーキリ
 デザートも、初めての味にワクワク。ランチミールスについていたのはミーキリといって、ヨーグルトにキトル蜜というヤシの樹液を煮詰めて作られたシロップをかけたもの。樹液蜜ということでメープルシロップ的なものを想像しましたが、もう少し黒糖に近いコクがあり、さらりとした甘さは確かに蜂蜜とは違う樹液蜜の味わいでした。
 
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◆ ワタラッパン
別注文したワタラッパンというスリランカプディングもこのキトル蜜が使われていて、奥行きのある味わいとさらりとした甘みがうっとりする美味しさ。食後にちょっとだけ甘いものがほしい私には嬉しいデザート2種でした。
 
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スリランカ料理の相性はとても良かったようで、暫くハマってしまいそうです。思い出したら、わしわしっと混ぜたミールスをまた食べたくなってきてしまいました。

夜のメニューは更にバラエティに富んでいるようなので、ぜひまた再訪したいと思います。ごちそうさまでした。

2015年8月某日の旅先: 中野「アチャラナータ」さん

アチャラナータスリランカ料理 / 中野駅新中野駅東高円寺駅
昼総合点★★★★ 4.0

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