無芸大食・読書亡羊~美味しいものと本と旅~

美味しいものと本と旅が至福であり、生きがい。インスタ映えや星の数じゃなく、自分がいいと思えたものとの出会いを綴ってゆきたいです

そらみみ植物園(西畠清順)~読後所感~

※あくまでも個人的な感想です。一部作品のあらすじやテーマに触れている箇所があります。
まだこの本を読まれていない方は、以下記述に目を通される際にはどうぞご留意ください。

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「ボタニカ問答帖」を読んで、すっかり植物の想像を超えた魅惑的な世界に魅せられてしまった私が、「そらみみ植物園」を手に取ったのは、まったくもって自然な成り行きなのでしょう。

こちらは、明治元年から続く花と植木の卸問屋の若き5代目にして、世界を旅して植物を収集するプラントハンター西畠清順さんの著書。「ボタニカ問答帖」にも登場したハエトリソウを、スーパーマリオパックンフラワーになぞらえる(任天堂未確認事項・笑)ような、世代感が表れた発想や、石田衣良さんIWGPシリーズ」にも似た、ドライなのにどこかポエティックな文体にたちまち惹きつけられ、マコトが果物屋さんではなく植物の問屋さんだったらこんな感じだったのかも…なんて思いながら読みました。
 


世界を股にかけるハンターが誘う植物の世界は、さすがというかさもありなんというか、見たことも聞いたこともない珍しい種類のオンパレード。そのめくるめく世界には、西畠さんご自身の「マジすげえ!」と「歯が抜けるかと思うくらいの衝撃」から始まり、「おもしろい植物」と「その魅力の発見に、この人生すべてをかけていきたい」という熱い思いも込められていて、自然の奥深さ、摩訶不思議な進化を遂げた植物たち自体の面白さはもちろん、植物の世界に心から魅了されている人ならではの視点もまた、一読の価値ありです。
 
あの代々木Villageの庭をプロデュースしたのも西畠さんなのだそうです。オープン間もない頃に初めて代々木Villageを訪れたのは夜のレストラン利用のためでしたが、その一角に突如現れた森のような庭には度肝を抜かれました。しかし、斬新で自由な発想の根底にあるものは、「自然や環境や植物文化への敬意と理解、そしてなにより興味を深めるきっかけになれば本望」という西畠さんの植物への真摯な思いです。植物界の面白さに惹きつけられてきた今、改めて代々木Villageを訪れてみようと思いました。