無芸大食・読書亡羊~美味しいものと本と旅~

美味しいものと本と旅が至福であり、生きがい。インスタ映えや星の数じゃなく、自分がいいと思えたものとの出会いを綴ってゆきたいです

本郷三丁目「桃の実」~飲めなくったって大丈夫~

以前は酔い知らずの鯨飲で、すいすいと身体に入っていくアルコールは一体どこに消えていってしまうのか不思議なくらいでしたが、いつの頃からか酒量はほどほどになりました。胃の許容量もさることながら、度を過ぎると舌が麻痺するのか、料理やお酒を美味しく味わうための味覚が鈍感になってしまうのです。今も料理に合わせて各種のお酒は頂きますが、あくまでも料理と一緒に嗜む程度。けれど、食事を楽しむためにはこれで十分と考えるようにしています。

だから、「桃の実」さんのようなお店は、実はちょっと困ってしまうのです。お酒を呼ぶ料理というか、お酒と共に楽しみたいようなメニューが勢揃いで、昔みたいに飲めたらもっともっと楽しいだろうになぁと思ってしまうのです。お酒が弱くなったって、未だ酒呑み好きのメニューには目がなく、ビストロ料理も大好き、そしてスパイスを使った料理も大好きとあらば「桃の実」さんに飛びつかないわけはないのですが、どれもこれも魅力的な数々に、選ぶのも一苦労でした。

◆苦瓜のタマリンドソース煮
この字面の組み合わせだけでもう、お酒を欲してしまいそう。ゴーヤを、柑橘系の味がするタマリンドと組み合わせるという発想が新鮮でオーダーしましたが、初めて味わう甘・酸・苦の複雑な旨味に魅了されました。甘酸っぱいソースでこっくりと煮込まれた苦瓜は、わずかに歯応えを残した柔らかさ。まずタマリンドソースの風味がじゅわっと、それから「ニガウマ」な苦瓜の深い苦みが感じられます。ちょっと忘れ難いような、記憶に残る味でした。
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厚めにスライスされたシマアジがたっぷり。ケイパーとトマトの風味のアクセントも効いた、一般的なカルパッチョよりもパンチの利いた味わいで、カルパッチョとマリネのいいとこ取りといったところ。
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◆フォアグラのテリーヌ・マンゴーサラダ
たとえが不適かもしれませんが、セルロイドのようなつるつるの滑らかな舌触りに驚きました。肝ならではのねっとりとした甘みが際立っていますが、他のお料理に比べると優しい味付けです。スパイスの効いたマンゴー&トマトのサラダと共に口に運ぶことで、その味わいが活きるようです。
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ムール貝のハーブワイン蒸し
たっぷりのムール貝と美味しいスープに歓喜しました。が、ちょっとしたアクシデントでテーブルを変わることになった際に、スープだけが残っていた器ごと下げられてしまいました…。新たなテーブルに着席して気づいた時には既に遅し。美味しい貝ダシが出たスープをフォカッチャに浸して頂きたかった…。せっかくの美味しいお料理、頂くこちらだって真剣です。下げる前に一声かけて頂けたら有り難かったのですが。
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◆ゴア風ソーセージ
ビジュアルだけで飲めそうな一皿(笑)。ソーセージに使われているスパイスがハーブ系ではなくオリエンタル系で、肉汁と共にスパイスの香りが立ちのぼる、間違いのない美味しさでした。
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◆アティラチ ヴァルタルチャ カレー(山羊と万願寺唐辛子のカレー)
最後までビリヤニと迷ってこちらにしましたが、大正解。絶品でした。臭みはまったくなく、噛み締めるほどに肉の旨味とスパイスの香りが溢れ、旨味をたっぷり吸ったズッキーニやじゃがいもも美味。
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いずれも、一般的なビストロ料理よりもスパイスのパンチの効いたオリエンタルな風味が特徴的で、確かにお酒が進む味。こんなときもっとワインが飲めたらなと思わずにはいられませんでした。一方、お酒が飲めない同行者にとっては味付けがやや濃いめに感じられたものの、全て美味しく頂いたと絶賛でした。

早い時間だったせいか、カウンター席の私たちだけしかおらず、カウンターのL字の反対側に立つ給仕の方との距離が近くて、最初は少々戸惑いました。パーソナルスペースの感覚の違いだけかもしれませんが・・・。お店の居心地は決して悪くはなかったですし、他のお客さんの気配があれば気にならない程度ではありましたが。
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ともあれ「オリエンタルビストロ」と聞いて思い描く以上の、新鮮な驚きを感じるメニューと斬新さに終わらない確かな味で、他にも食べてみたい!と思うメニューがたくさんありました。次回はぜひ、ビリヤニとバナナの葉包みを頂いてみたいと思います。ごちそうさまでした。

2015年9月某日の旅先: 本郷三丁目「桃の実」さん

桃の実ビストロ / 本郷三丁目駅水道橋駅湯島駅
夜総合点★★★☆☆ 3.5