無芸大食・読書亡羊~美味しいものと本と旅~

美味しいものと本と旅が至福であり、生きがい。インスタ映えや星の数じゃなく、自分がいいと思えたものとの出会いを綴ってゆきたいです

世界で一番乙女な生きもの(光浦靖子)~読後所感~

※あくまでも個人的な感想です。一部作品のあらすじやテーマに触れている箇所があります。
まだこの本を読まれていない方は、以下記述に目を通される際にはどうぞご留意ください。

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世界で一番乙女な生きもの
光浦 靖子
宝島社
2010-02-13


本好き芸人としてテレビ出演しているのを観て、その人となりに興味が湧き、エッセイを読んでみました。芸人としての光浦靖子さんのことはよく知らないけれど、媚びた笑顔がないばかりか、あまり笑わないという印象がありました。とっつきにくく難しい人なのかと思いきや、むしろタイトル通り「乙女」な、純粋でナイーブな一面をお持ちで、シニカルに見える表情の裏に隠れた、慎ましやかで可愛らしい内面が垣間見えるエッセイです。

作品自体は2011年に刊行されたものですが、雑誌連載だったエッセイの初出は2007年。「ポジティブなことを常に口に出してないといけない」ような、切羽詰まったポジティブ思考や一生懸命さに息苦しさを感じるという光浦さんの意見には、2015年現在を以てしても、深く首肯しました。ネガティブ思考を礼讃するわけではないけれど、特に東日本震災以来、前向きであれと押しつけがましく叫ばれる風潮に、私も時折、ちょっとした薄ら寒さを覚える者です。

何かとエキセントリックな振る舞いがもてはやされる芸能界において、仕事でも私生活でも俯瞰的な考え方を失わず、且つ芸人としての見られ方も冷静に分析している光浦さん。読み始めた当初は、こんな性格だと芸能界で仕事をしていくのは一苦労なのでは、と要らぬ心配をしてしまいましたが、妙に芸能界の空気に迎合せず、芸人となる前と変わらぬブレない視点を持っているからこそ、一定したポジションで長らく芸人を続けていられるのかもしれません。