無芸大食・読書亡羊~美味しいものと本と旅~

美味しいものと本と旅が至福であり、生きがい。インスタ映えや星の数じゃなく、自分がいいと思えたものとの出会いを綴ってゆきたいです

神保町「ティーハウス タカノ」~安息地の、さらにその先の~

少々ストレスがたまっていたこの日、神保町で思う存分本めぐりをして、読み過ぎでヘトヘトになった末、「ティーハウス タカノ」さんに立ち寄りました。

新聞や雑誌が置いてあり、近所の喫茶店のような敷居の低さなのに、紅茶は茶葉にこだわった本格的な味。コーヒーの芳香と共に本をめくる時間が究極の喜びであるように、紅茶の深い渋みとミルクの甘さを味わいながら、活字疲れした目と脳を癒す時間もまた、至福のひとときです。
 
◆ アッサムミルクティー & イングリッシュスコーン
濃いめのアッサムミルクティーの芳醇な香りにうっとり。ざっくりとした歯応えとほろほろとした口どけが嬉しいイングリッシュスコーンには、生クリームではなく、ちゃんとクロテッドクリームが添えられてきます。小一時間ほどこのお店でゆったりと過ごしていたら、いつの間にかモヤモヤは霧散していました。

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◆ ペパーミントティー
待ち合わせをした同席者はペパーミントティー。ミントのハーブティーではなく、ミントフレーバーの茶葉なので、ミルクティーにしても違和感がないことに驚きました。
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東京都下にあるのんびりした学校での高校生活は、嫌な思い出がほとんどない楽しい日々だったのですが、元来の集団離脱癖がひょっこり顔を覗かせ、どうしても学校に足が向かず、家を出たものの行き先は神保町本屋街、という日がごくたまにありました。

京王線沿線の学校だったので、渋谷や吉祥寺に出るという選択肢もあったのですが、学区に近い繁華街は周到に避けていました。神保町は、学校関係者の目の届きそうもない場所というだけでなく、当時の私にとっては、誰にも邪魔されずに落ち着ける場所として、最上の街でした。

OLに間違えられていた老け顔と、私服高校だったことが幸いして、白昼堂々と神保町を歩いていても、補導される心配は皆無。思う存分に本屋に入り浸り、疲れたら喫茶店かマックで休憩、というささやかなサボタージュを楽しんだ翌日は、すっかり気が済んで清々しい気持ちになり、また嬉々として日常に戻るのです。

しかし、当時から年配男性の多い街・喫煙者天国の神保町での一番の悩みは、完全禁煙の店の少なさ。さすがに煙草の匂いをつけて帰宅するわけにいきません。限られた選択肢の中で、一番お世話になったのが、紅茶専門店「ティーハウス・タカノ」さんなのでした。

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地下にある意外と穴場な立地、天井が高くて広く明るい店内、そして神保町にあっては女性客率が高いのも、ズル休み中の高校生にとっては安心できるポイントでした。 たっぷり2杯頂けるティーポットで供される紅茶を飲みながらゆっくり過ごせる居心地の良さに、何度救われたことでしょう。

煌びやかでも、ことさらオシャレでもないけれど、私にとって神保町という街は、のびのびと羽根を伸ばせる安息地のような場所で、更にその中でも、ここ「タカノ」さんは、ほっと息がつけるシェルターのような空間なのかもしれません。

コーヒーも紅茶も美味しい店が揃い、たくさんの本が集まる、大好きな街、神保町。原宿も、銀座も、渋谷も、新宿も、吉祥寺も、再開発されるたびにどこも似たような、のっぺらぼうな顔になりつつありますが、どうかどうかこの街だけはいつまでも、いぶし銀のような武骨な存在のまま、私の安息地であってほしいと願っています。
 
ごちそうさまでした。

2015年10月某日の旅先: 神保町「ティーハウス タカノ」さん

ティーハウスタカノ紅茶専門店 / 神保町駅新御茶ノ水駅竹橋駅
昼総合点★★★★ 4.0