無芸大食・読書亡羊~美味しいものと本と旅~

美味しいものと本と旅が至福であり、生きがい。インスタ映えや星の数じゃなく、自分がいいと思えたものとの出会いを綴ってゆきたいです

まにまに(西加奈子)~読後所感~

※あくまでも個人的な感想です。一部作品のあらすじやテーマに触れている箇所があります。
まだこの本を読まれていない方は、以下記述に目を通される際にはどうぞご留意ください。

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西加奈子さんの著書でいちばん好きなものをあげよ、と言われるのが苦痛に感じるほど、どの作品も好きです。大反響を呼んだサラバ!はもちろん、「舞台」「きりこについて」、初期の「さくら」など、どれも鮮烈な印象と共に記憶に刻み込まれている作品ばかりですが、小説と同じくらいの度合いで愛しているのが、西さんの書くエッセイです。

「まにまに」は、久しぶりに刊行されたエッセイで、随所で掲載されていた6年分の作品がまとめられた一冊です。大阪弁で軽妙に綴られる、感情豊かな日常の中には、思わずはっとさせられる「気づき」が潜んでいて、西さんの深い洞察力や、言葉に対しての溢れんばかりの愛情、そして作家としてモノを書くことについての謙虚で真摯な姿勢が見えてきます。エッセイであっても、言葉のひとつひとつに対する責任や矜持のようなものが感じられるのです。

ことに興味深く読んだのは、後半部分の、音楽と本に関するレビューです。紹介している作品への愛情もさることながら、瑞々しい発想と独自の視点での捉え方、それを表現する丁寧な言葉の選び方が素晴らしく、上質な短編小説を読んだような気持ちになります。タイトル「まにまに」の意味は、あとがきで説明されているのですが、その言葉を選んだセンスも理由も非常に西さんらしく、思わず口ずさんでしまいそうな、愛すべきタイトルです。



舞台
西 加奈子
2014-01-10