無芸大食・読書亡羊~美味しいものと本と旅~

美味しいものと本と旅が至福であり、生きがい。インスタ映えや星の数じゃなく、自分がいいと思えたものとの出会いを綴ってゆきたいです

東京駅「ニッポンの駅弁」~駅弁で、大切なのはTPO~

東京駅の構内で、新幹線の発車時刻までの空き時間に、各店に並んだ駅弁を冷やかすのは楽しいものです。そのラインナップは多種多彩、それぞれ魅力に溢れていて、百貨店催事での人気も無べなるかな。しかし、私にとっては、食べるタイミングがなかなかに難しい食べ物です。

というのも、旅に出る理由の一つが、旅先で美味しいものを食べることにあり、車中の駅弁でお腹を満たすよりも、現地での一食を優先してしまうから。かといって、催事場の行列に並んで買い求め、自宅に持ち帰って頂くのは、少々興ざめな気がするのです。お弁当は、車中や屋外で食べてこそ、ではと思う者です。

今回、北陸新幹線を利用した富山への旅に際して、東京駅出発は朝7時20分。富山駅到着は9時半頃ですが、12時に予約してある昼食まで食事の予定がなかったので、これはチャンス!とばかりに、駅弁を買って乗り込むことにしました。

便利なことに、東京駅では朝6時半からお弁当が買える店が数多ありますが、どこも絶え間ない賑わい。殊に「駅弁屋 祭」さんの賑わいは一際で、よりどりみどりの全国の駅弁からひとつを選ぶにも、人に揉まれて一苦労、そして会計の長蛇の列に一苦労するので、今回は、北陸新幹線乗車改札にもほど近いグランスタ・ダイニングの、「ニッポンの駅弁」さんで購入することにしました。

こちらは、「全国各地の老舗銘店や気鋭のシェフ達と共に創り上げた、新しい『ニッポンの駅弁』専門店」。利用するのは初めてですが、幾度となく徘徊していた甲斐あっておおよその品揃えは把握しています。きっと、あまり悩まずに選べるだろうというのも、この店で買うことに決めた理由のひとつです。(新幹線に乗るときには、乗車までは大体グランスタB1Fをぶらぶらするのが常なのです。)

一番人気は「賛否両論」笠原シェフのお弁当なのだとか。味付けが良く、内容がバラエティに富んでいておかずが多めなのも嬉しいお弁当なのですが、これは以前頂いたことがあるので、今回はパス。懐石弁当系は、あまりにも豪華で、昼までにお腹が空かない危険があるのでパス。お昼には鮨を頂く予定なので、鮨系弁当もパス…。あれ?結構悩むぞ。

結局、形も可愛くシンプルな「なすび亭」さんの、『なすび亭弁当』に落ち着きました。恵比寿店(今は再開発工事のため一時閉店だそうですね)でお料理を頂いたことがあり、味付けに信頼と安心が置けるのも、ポイントでした。
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『なすび亭弁当』は、親子丼をベースにした鶏肉主体のお弁当です。鶏めしも、上に載った玉子煮も適度にしっとりしているので、冷めていてもボソボソ感が全くなく、美味しく頂けます。鶏肉軟骨入りのつくねも、しっかりとした甘辛味ではありますが、甘すぎず濃すぎずの加減が私にはちょうど良いあんばいでした。青菜が菜の花なのも嬉しいです。
 
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このお弁当を選んだ一番の決め手が、野菜が煮物ではなく、素揚げに胡麻味噌だれをつけて頂くスタイルだったことです。昔ながらの駅弁の、煮物や玉子焼の甘い味付けがどうにも苦手な私は、薄味志向となった今でも、ついそれらを避けてしまうのでした。素揚げの野菜は、じゃがいも、蕪、人参、茄子、アスパラガス、と彩りも綺麗。冷めても硬くならず、胡麻味噌ダレが、これまた良い味です。また、沢庵漬け梅干しも、甘くないので助かりました。

随分久方ぶりに、車中での駅弁食と相成りましたが、ビル群ばかりの東京駅から徐々に緑が増してゆく、車窓からの流れゆく景色を見ながら、心地良い揺れに身を委ねて食べるお弁当は、ことのほか美味しく感じられ、旅の高揚感もいや増します。お弁当は、やっぱり「いつ」「どこで」「どんなふうに」食べるか、というTPOが大事だなぁと、改めて思ったことでした。

早起きして出掛けてきたので、お腹もくちくなったら、少々眠くなってきました。「かがやき」に乗車したので、富山までは 僅か2時間8分。うたた寝して目が覚める頃には、もう富山の空の下にいることでしょう。

ごちそうさまでした。

2015年11月某日の旅先: 東京駅「ニッポンの駅弁」さん 

ニッポンの駅弁弁当 / 東京駅大手町駅二重橋前駅
昼総合点★★★☆☆ 3.0