無芸大食・読書亡羊~美味しいものと本と旅~

美味しいものと本と旅が至福であり、生きがい。インスタ映えや星の数じゃなく、自分がいいと思えたものとの出会いを綴ってゆきたいです

こわい絵本: おとなと子どものファンタジー 別冊太陽 日本のこころ 230号~読後所感~

※あくまでも個人的な感想です。一部作品のあらすじやテーマに触れている箇所があります。
まだこの本を読まれていない方は、以下記述に目を通される際にはどうぞご留意ください。

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視えるはずのない超自然的な存在や現象が喚起する「イマジナティヴな恐怖」には、こころの奥底をのぞき込み、戒める力がある…として、古今東西の様々な「こわい絵本」を集めた、ムックタイプのブックガイドです。小さな頃から絵本を通して、読み継がれてきた物語に隠された真理やメッセージを汲み取り、残酷な現実を知り、死を思うことで命の尊さを知る過程は、今の私たちにこそ必要不可欠なのではないかと感じました。

紹介されているのは、大きく6つのカテゴリーに分けられた、約80冊です。誰もが一度は読んだことがあるであろう「かちかちやま」赤ずきんなどに代表される、”こわい昔話と童話”や・・・







ねないこだれだなどの、”おばけと妖怪”。





注文の多い料理店に代表される、”奇妙な世界”。





「かないくん」「風が吹くときなどの、”死を思う”。


風が吹くとき
レイモンド ブリッグズ
1998-09


岩崎書店の『怪談えほん』シリーズとして出版されている、宮部みゆきさんの「悪い本」京極夏彦さんの「いるのいないの」、恩田陸さんの「かがみのなか」など(この3作は本当に怖い!絶対自宅には置きません)、比較的新しい絵本も収録されています。





ひろしまのピカ」や、地獄絵巻を絵本に仕立てた「絵本 地獄」など、想像を絶する悲惨さで目を背けたくなるような絵もありますが、それが瞼に焼き付けられることによって、二度とこんな光景は見たくないと感じるでしょうし、そういった感覚は、言葉で教えられた倫理観よりも遥かに強く、心に刻まれるのではないでしょうか。
どれも絵本の1ページを紹介しているに過ぎませんが、「くわずにょうぼう」「もじゃもじゃペーター」など、幼少時に読んだときの、気味の悪さや、説明のつかないゾワゾワ感が蘇る名作を懐かしく思ったり、解説を読んで子ども心に感じた思いの正体に気がついたりと、興奮と興味が尽きない一冊。改めて、それらの絵本を読み返してみたいなと思いました。