老後の資金がありません（垣谷美雨）～読後所感～ - 無芸大食・読書亡羊～美味しいものと本と旅～

※あくまでも個人的な感想です。一部作品のあらすじやテーマに触れている箇所があります。
まだこの本を読まれていない方は、以下記述に目を通される際にはどうぞご留意ください。

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老後の資金がありません [単行本（ソフトカバー）]

垣谷美雨

中央公論新社

2015-09-24

来るべき老後に備え、盤石の構えで貯金をしていた主人公の篤子ですが、娘の結婚・舅の葬儀に際して、金銭感覚の違う親戚たちに振り回され、思いもよらぬ出費を強いられます。追い打ちをかけるかのように、パート勤めの篤子ばかりか、夫まで職を失うという大ピンチに見舞われ、1200万円あった老後資金は目減りしていくばかり。夫婦、親子、親戚、友人とのそれぞれの関係で「お金」に関する建前と本音が交錯する中、なんとか生活を立て直そうとする主婦の奮闘記です。

「七十歳死亡法案、可決」や「子育てはもう卒業します」など、直截的なタイトルが多い著者の新作ですが、今回はとにかく「お金」にフォーカスした内容で、冠婚葬祭時にどこまでの出費なら納得できるかという問題や、兄弟間における親の世話と費用負担、友人とのランチの適正価格など、誰もが思い煩うあれこれにもしっかり切り込んでいきます。

垣谷美雨

2012-01-27

2013-12-11

優柔不断であれこれと気を揉んでばかりの篤子にいらっとしたり、年金詐欺・娘のDVの心配など多くのエピソードが散らかり過ぎていて、中盤テーマが見えづらくなる部分もありましたが、最後は、私たちの人生にとって「お金」とは何なのか、というシンプルな結論でまとまっていて、すっきりとした気分で読み終えました。

老後資金の目安にせよ、何に幾らお金を使うかという尺度にせよ、結局は、自分が何を幸せと感じるかによって違ってきます。他人との比較や平均額を気にするよりも、自分にとって大事なものとそうでないものを見極めることこそが、「足るを知る」であり、納得できる有意義なお金の使い方につながるのでしょう。むやみやたらと生活水準を上げるためではなく、自分にとってのQOLを追求するための手段として、「お金」と付き合っていきたいものです。