無芸大食・読書亡羊~美味しいものと本と旅~

美味しいものと本と旅が至福であり、生きがい。インスタ映えや星の数じゃなく、自分がいいと思えたものとの出会いを綴ってゆきたいです

スノーピアサー / Snowpiercer~観賞後感~

※あくまでも個人的な感想です。一部作品のあらすじやテーマに触れている箇所があります。
まだこの映画をご覧になっていない方は、以下記述に目を通される際はどうぞご留意下さい。

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2013年の韓国・アメリカ・フランス合作です。舞台は、地球温暖化阻止のために散布された化学薬品が裏目に出て、全てが雪と氷に覆われてしまう氷河期となった近未来の地球です。そこには、【スノーピアサー】と呼ばれる列車が、走る「ノアの箱舟」の如く、僅かに生き残った人類を乗せて走り続けていました。

しかし、【スノーピアサー】内に生き残った人々の中にも社会の縮図が歴然と存在し、前方車両には上流階級者が、最後尾列車に乗るは奴隷のように扱われる貧困階級、と明確な区別がなされています。そこでは、列車内の人口を調整するために、最後尾車両の人々を定期的に間引くような行為も行われていたのでした。最後尾列車に乗る主人公カーティスは、仲間と共に反乱を試みて前方車両を目指しますが、死闘の末、ようやく対峙した【スノーピアサー】の生みの親で、列車のエンジンの開発者であるウィルフォードからは、驚愕の事実を告げられ…。



主人公カーティスにクリス・エヴァンスの他、彼の支えとなる老人ギリアムにジョン・ハート、反乱軍の仲間には「ヘルプ」オクタヴィア・スペンサーリトル・ダンサージェイミー・ベル、車両の扉を開けるキーパーソンにソン・ガンホ、貧困階級を統べる総理をティルダ・ウィンストン、そしてウィルフォードにエド・ハリスと、ひとクセあるキャスト陣の魅力と斬新な設定に惹かれて観ました。
 
しかし、列車の疾走感に反して、今ひとつ緊張感に欠けるストリー運びや、執拗に残虐的な戦闘シーンに辟易して、最後まで不完全燃焼感が拭えませんでした。タランティーノ監督作品のように、デフォルメされた人物像やアクションが面白さを誘う作りなのかと思いきや、やたらと深刻なカーティスの苦悩などのシリアスな場面もあり、作品の方向性が定まらず、観ているこちら側が戸惑います。あれこれと詰め込み過ぎて、全体的に散らかってしまっている印象を受けました。ラストの盛り上げさえも緊張感に欠けていて、ショックに嘆くカーティスに同調出来ず、しらけてしまいます。

そんな中にあって、ティルダ・ウィンストンの怪演っぷりと、ソン・ガンホのユーモア&シリアスのバランス感覚が見事な表情演技が、際立って素敵でした。この二人の演技を観れただけで、映画本編全体の残念さが帳消しになるくらい。名優の存在感とは、こういうところで発揮されるものなのかもしれませんね。