無芸大食・読書亡羊~美味しいものと本と旅~

美味しいものと本と旅が至福であり、生きがい。インスタ映えや星の数じゃなく、自分がいいと思えたものとの出会いを綴ってゆきたいです

あの子の考えることは変(本谷有希子)~読後所感~

※あくまでも個人的な感想です。一部作品のあらすじやテーマに触れている箇所があります。
まだこの本を読まれていない方は、以下記述に目を通される際にはどうぞご留意ください。

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23歳のフリーターの巡谷と、高校の同級生つながりのアパートの同居人・日田の、二人の女性の物語です。といっても、友情を育み成長していく…というすこやかなストーリーとは無縁で、情けなくもぶっとんだ二人のおかしな思想と会話、行動が、凄まじいパワーを持って迫りくる一冊です。

巡谷は女性ながらも「おっぱい至上主義」で、自分のGカップアイデンティティとしていて、セフレの彼が他の女性からはモテないようにするため、彼をデブ化させることに一生懸命な子。かたや日田は、自臭症さながらに体臭を気にしたり、ゴミ焼却炉から流れ出ているダイオキシンによって、ヒトが持つ潜在的な「悪さ」が引き出されていると信じたり、無職なのに全然進まない手記を書こうとしているような、不思議な子です。あらすじは、あってないようなもの。とにかくハチャメチャな二人の、ちょっと哀れでおかしい毎日に引き込まれます。

二人の発想も、行動も、最初から最後まで、私には思いもよらないものばかり。実生活ではきっと、こんな人に出会うことも、会話を交わすことも、ましてやその心の奥底を垣間見ることもないかもしれません。しかし、色々な本を読んでいると、こういうとてつもない世界に、足を踏み入れることができます。そればかりか、私とは考え方や生き方が180度違う人の心の襞を覗くことで、ある部分を羨ましく思ったり、どこかしらシンパシーを感じたり、同意できないながらも理解出来たり、私の心も脳もぐちゃぐちゃにかき回されます。

毎日新しい人に出会い、その人の考え方や生き方を学んで刺激を受ける、なんてことは到底不可能でも、本ならばそれが可能です。私とは似通ってない人や、私なぞ到底出会うこともないような世界にいる人に出会うことも、本の中なら可能です。本を読む楽しさを絶対に手放すことが出来ない理由の一つは、最初のページをめくる時の、こんなワクワクがあるからに他なりません。

初めて手に取った本谷有希子さんの作品は、この「あの子の考えることは変」で、今回何年ぶりかで再読しました。こういうエネルギッシュな作品は、その内容が例え破滅的であっても、読んでいるだけでやみくもに騒ぎ出したいようなパワーが湧き出し、わけのわからない感動に包まれます。本谷さんの「グ、ア、ム」や、角田光代さんの初期の作品、宮木あや子さん「憧憬☆カトマンズ「婚外恋愛に似たもの」などでも、そんな力強いパワーをびんびんと感じます。小心者で保守的で、石橋を叩いて渡るようなタイプの私は、もしかしたら、こういった傾向の作品を読むことで、無意識のうちにどこかしらバランスを取っているのかもしれません。