無芸大食・読書亡羊~美味しいものと本と旅~

美味しいものと本と旅が至福であり、生きがい。インスタ映えや星の数じゃなく、自分がいいと思えたものとの出会いを綴ってゆきたいです

道頓堀「美津の」~お好み焼きってこんなに美味しかったのか!~

食べて食べまくって来ました、大阪で。数年前に比べると胃の許容量がぐっと小さくなってしまったけれど、限られた滞在日数で、我ながらなかなかやるな、と自画自賛するくらいには食べたかと…。もう順番は無視して、大阪で頂いてきたものを片っぱしから列挙していきたいと思います。

まずは、お好み焼き。大見栄を切ったものの、大阪に関しては4回目の訪問で、観光でも食べ歩きでも、有名どころさえ網羅出来ていないという、ていたらくな私。同行者も似たようなものです。考えてみたら、居住まいを正して大阪でお好み焼きを頂くのは、なんと今回初めてでした。そんなわけで、初心者らしく、大阪お好み焼きの最古参と言われる道頓堀の「美津の」さんを訪問しました。

開店前から出来ていた列には3組目に入れたので、11時半の開店と同時に1階カウンターに通されました。鉄板を前にずらっと客が並び、前に立ちはだかるは、若手の焼き手さんたち。目の前で焼いてくれるので、生地の混ぜ方や具材の載せ方、焼き加減などがつぶさに観察出来る上に、熱々が頂けます。

◆ 山芋焼(貝柱入り)
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まずは、小麦粉を一切使用せず、山芋だけで焼き上げるという名物メニューの「山芋焼」を。豚肉や海老などから選べる具材は、どれも見るからに新鮮で、ごろごろっと大きめ。私たちが選んだ貝柱は、まずバターで軽く香りづけしながらソテーされ、キャベツ入りの山芋生地が重ねられます。粉が入っていないので、時間がかからず、ほどなく焼き上がりました。頼りなく儚げな見た目ですが、山芋らしいふわふわサクサクとした軽い口当たりと、プリッと半生の貝柱の歯応えが印象的。だしの旨みとキャベツの甘み、焼き上がり前に加えられた花ガツオの風味が絶妙で、クセになる味わいでした。

◆ 美津の焼
店名を冠した「美津の焼」は、いわゆる定番のザ・お好み焼きですが、豚、イカ、海老、貝柱、たこ、ミンチ肉など6種の具材が入った豪華版です。空気をふくませてふわりとかき混ぜた生地で、具材を包み込むような焼き方は、具材と生地の双方の美味しさを最大限に引き出すためなのだと、鉄板の上を観察して深く納得しました。
 
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頂いてみると、その考察は確信に変わりました。外側にある豚肉は脂身も含めてカリッと焼きつけられ、卵はとろりとマイルドに、中心に置かれた海鮮は火が通り過ぎて硬くならないよう寸止めの焼き加減で、そしてじっくりゆっくりと火が通ったキャベツは柔らかく甘く、山芋焼きに負けず劣らずふんわりとした生地はそれらを優しく受け止めるクッション役のよう。全ての加減が絶妙で、ただただひたすら美味しいという印象が残るお好み焼きでした。また、初心者な上に、粉ものもソースもあまり得意でない私にとっては、粉のどしんとした重みが皆無でするりと頂ける軽やかな生地と、適度な辛味と酸味があるキリッとしたタイプのソースは、とても美味しく感じられました。

いろんなものをごちゃまぜにした混沌とした味が、お好み焼きというものの美味しさなんだろうという、私の勝手な思い込みは、「美津の」さん山芋焼き美津の焼を頂いてみると、完全に間違っていたことが判明しました。こんなにも様々な具材が組み合さっているのに、それぞれの美味しさを消すことなく、むしろくっきりと際立たせていることに、お好み焼きという料理の真髄を見たような気がします。ちょっと大袈裟かもしれませんが、生まれて初めて、お好み焼きという料理に感動しました。
 
ただ、初心者的には、お店の焼き方の人と鉄板を挟んでガチで対峙するような、距離感の近さにはちょっと怯みました。行列店なので、回転率の速さが大事なのは重々承知してますが、焼き方をじっと観察出来る代わりに、食べ進み具合をじっと観察されるような(決して凝視されていたわけではありませんが・笑)落ち着かなさがありました。食べ終わる前に、さっとアレッシイの楊枝入れ(懐かしい!)を差し出されると、あ、そろそろお暇しなければですね…と試合終了のゴングが鳴らされた気分になります。鉄板のこちら側に座ってマイペースを貫くには、もっと場数を踏む必要があるのでしょうね。

とはいえ、数多あるお好み焼き屋さんの中で、私の最初の一歩を「美津の」さんで踏み出せて良かったと思います。またお好み焼きを食べる機会があれば、もう一度「美津の」さんに行ってしまうかも…。

ごちそうさまでした。

2016年2月某日の旅先: 大阪・道頓堀「美津の」さん

美津のお好み焼き / 日本橋駅近鉄日本橋駅大阪難波駅
昼総合点★★★☆☆ 3.5