無芸大食・読書亡羊~美味しいものと本と旅~

美味しいものと本と旅が至福であり、生きがい。インスタ映えや星の数じゃなく、自分がいいと思えたものとの出会いを綴ってゆきたいです

八重洲「Bubby's(バビーズヤエチカ)」~想い出の味を楽しむ店~

青春時代の真っ只中にアメリカで暮らしていたせいか、アメリカ発のダイナー系やファーストフードの食べ物にひどく郷愁を覚える。若い頃とは違うのだから、あまりボリューミーなものを食べるのよろしくないのは百も承知だが、わかっていてもやめられない味だ。

英語が不慣れなだった頃の難関は、料理のオーダーだった。お小遣いが少なかったのでカジュアルなダイナーばかりを利用していたが、卵はどう調理する?オムレツには何を入れる?サイドメニューのポテトは?パイにはアイスクリームをつける?…などなど、果てのないチョイスが続くことに当初はうんざり。が、食い意地故に習得が最も早かったのが、このテの英語だった。ダイナーメニューは、打てば響くようにスラスラとやりとり出来るようになった時の快感と共に深く心に残る、私のとびきりの想い出の味だ。

東京に上陸している中で、一番好きでよく行くチェーンは「Bubby's」さん。ウッディな店内も、落ち着けるダイナー風のボックス席も、マグカップのコーヒーも、パワーブレックファストが充実しているのも、みんな好き。アークヒルズ店汐留店も行くけれど、最も利用頻度が高いのは八重洲地下街にあるヤエチカ店。東京駅は自宅の最寄りから一本で行けて交通の便が良い上、場所柄営業時間が長く、通し営業のお店も多いので何かと重宝しているが、中でも一番よく行くのが「Bubby's」さん
20160909 バビーズ コーヒー

オープン当初からもう数え切れないほど行ったので、繰り返し食べているメニューもあるし、写真に収めていないメニューもあるが、ここらで一度記録しておきたい。

エッグベネディクト
私の卵料理ツートップは、どちらもアメリカで初めて食べたエッグベネディクトと具沢山のエブリシングオムレツ。特にエッグベネディクトは当時日本では全く知られていない存在だったので、帰国したばかりの頃は恋しくて恋しくて、しかたなく自宅で作っていた。こんなふうにポピュラーになり、割とどこでも食べられるようになる日が来るとは…。いっときのブームは落ち着いたようだけど、流行に関わらず、いつまでも好きな卵料理の一つだ。 
20160909 バビーズ エッグベネディクト (2)
以前ブログに書いたこともある「エッグセレント」さん始め、色々なお店で食べ比べてみたけれど、「Bubby's」さんエッグベネディクトが私には一番しっくりくる。オランデーズソースの濃度や味のあんばいがちょうどよく、全体的にオイリー過ぎず、日常的にいつでも食べられる奇をてらっていない感じが、恐らくアメリカで食べ慣れた味に一番近いのだと思う。
20160909 バビーズ エッグベネディクト

サワークリームパンケーキ
20131017 Bubby's
こちらは随分前の訪問時のもの。同席者がオーダーした、苺とバナナを載せたサワークリームパンケーキ。最近は外でパンケーキを食べることは殆どなくなったけれど、自宅でパンケーキを作る時はサワークリームかヨーグルトを加えた軽めの生地に仕上げるので、単にふわふわなのではなく軽い口当たりの「Bubby's」さんサワークリームパンケーキは好みの食感だった。甘さ控えめでクリームゴテゴテでないのもいい。

◆ ホットドッグ
20131017 Bubby's (3)
「Bubby's」さんベーコンソーセージもホームメイドで、モーニングプレートのサイドや、ホットドッグ、ハンバーガなどで味わえる。ぷりっとしたソーセージは粗挽きの肉肉しい歯応え、スパイスとスモークが効いたワイルド味わい。

「Bubby's」さんはもともとパイ専門店だけあって、パイメニューの充実度はピカイチ。利用頻度が多い理由の一つには、パイのテイクアウトができる点もあって、イートイン利用せずにパイだけお土産に買って帰ることも多々ある。何といっても嬉しいのは、他店ではあまり見かけないキーライムパイチェリーパイがあること!ピーカンメープルパイパンプキンパイも、たまに食べたくなるアメリカらしい味。

◆ キーライムパイ
20131017 Bubby's (2)
キーライムパイは特に、日本では探そうったってなかなか巡り合えるもんじゃない。ライム果汁入りとはいえ、フィリングにコンデンスミルクを使っているため、結構甘めなので苦手な人は閉口するみたいだけど、これも私的には「ザ・アメリカ」な味。脳天にガツンとくる甘さを少しずつ少しずつ削り取るように食べていると、甘党ではないはずの私も無条件で口元が緩んでしまう。キーライムといいレモンカードといいレモンパイといい、私は酸味の利いたとろり濃厚クリーム系な味に抗えないのかもしれない。

◆ チェリーパイ
20160909 バビーズ チェリーパイ
実は、チェリーパイに関しては、酸味が強く洗練された味わいの「松之助NY」さんのものが一番だと私は思っている。が、「Bubby's」さんアメリカンカントリー風の素朴な味わいは、これはこれで好きなのだ。スーパーで売っている瓶詰めサワーチェリーをそのまま使ったような味がいい。こうなってくるともう、単なる思い入れによる甘甘の評価になってしまうけど…。

◆ アップルパイ
「Bubby's」さんのアップルパイは、定番のマイルハイアップルパイと、ウィスキーアップルパイの2種類がある。どちらも美味しいが、私はピーカンナッツ入りのクランブルが載っている点と、酸味が強くウィスキーの仄かな香りがより好みで、ウィスキーアップルパイをよく頂く。アップルパイに関しても、家庭料理にこだわったコンセプトの「Bubby's」さんの懐かしい味わいと、「松之助NY」さんのNYC風、どちらも甲乙つけがたく好きだ。(「グラニースミス」さんのアップルパイも全種類頂いたことがあるけれど、もう少しフィリングのりんごに酸味がある方が好みだった…。)

パイメニューに限らず、「Bubby's」さんには、他店ではあまりお目にかかれないメニューが多いように思う。エッグベネディクトパンケーキを提供する店は増えたけれど、スラッピージョー、グリルドチーズサンド、アーティチョークディップはまだ浸透していないと思うし、遊びに行った友人のステイ先で出してくれたような、アメリカのお母さんの味・マカロニチーズミートローフなどの家庭料理がずらり揃っている店は貴重だ。出張や観光でアメリカを再訪しても、なかなかピンポイントでこれらの料理にありつける機会はないので、想い出の味に浸れる東京のチェーン店万歳!と思う。
 
このたび、お隣の吉祥寺コピス内にも「Bubby's吉祥寺店」がオープンした。他の街にはない個性的な個人店が多いことが吉祥寺の魅力なので、最近のチェーン店の相次ぐ吉祥寺進出には一抹の不安もあるけれど、大好きなお店に気軽にいつでも行けるのは便利だなぁ、と思うのもまた近隣住民の本音。まだオープンしたばかりなので、物見遊山のお客さんが落ち着いて、お店のスタッフの方のオペレーションがこなれた頃合いを見計らって行きたいと思う。それまでは引き続きヤエチカ店にお世話になります!

ごちそうさまでした。

バビーズ ヤエチカカフェ / 東京駅京橋駅日本橋駅
昼総合点★★★★ 4.0