無芸大食・読書亡羊~美味しいものと本と旅~

美味しいものと本と旅が至福であり、生きがい。インスタ映えや星の数じゃなく、自分がいいと思えたものとの出会いを綴ってゆきたいです

函館「滋養軒」~ラーメンはもちろん出色はギョーザ!~

ここ数年、東京で暮らしている時のラーメン率は激減しているのだけど、旅先では不思議とご当地ラーメンを食べてみたくなる。とりわけ北海道はそんな気になることが多く、今回は同行者の熱烈な希望もあって、お昼は函館塩ラーメンを頂くため、「滋養軒」さんを訪問。
2018-06-29 11.30.01
 
11時の開店に向けてのんびり歩きながら目指したが、辿り着いたときは平日ながら既に店前に列が出来ていた。ぬかった…!辛くも一巡目を逃したものの、年季の入った店構えの想像を裏切る、意外に広めな店内だったので、二巡目の先頭につき、ほどなくカウンターに通される。

◆函館塩ラーメン
供された時点から丼の底まで見渡せる、見事なまでに澄み切ったスープに、折り目正しく収まった麺とチャーシュー。文句のつけようのないビジュアルだ。
2018-06-29 11.58.57
その透明度の高さゆえ、あっさり上品な味わいを想像するが、ピシッと芯の通ったしっかり塩味に、カウンターパンチを食らった気分。なかなかどうして骨太ではあるけれど、決して塩辛いわけではない。
スープだけを飲むと、一口目は濃い目かなと感じるかもしれない。が、麺と一緒だと、このスープがもちもちの卵麺をしっかりコーティングしているので、
啜った直後の口の中の麺とスープのバランスが、とってもいい感じなのだ。塩ラーメンは途中で飽きが来ることもあるけれど、ウマウマ~♪と立て続けに啜っても倦むことがないのは、あっさりしすぎずこってりではない、バランスがいいってことなのかな。

◆焼きギョーザ
2018-06-29 11.59.50
メニューの「ギョーザ」という可愛い字面に惹かれて条件反射的にオーダーしただけだったのに、正直なところ塩ラーメン以上に気に入ったのが焼きギョーザだ。小ぶりのサイズ、香ばしい焼き目、
麺と同じもちもちの皮、脂っぽくないのに旨味たっぷりの餡、とどれも私の好みど真ん中!過度な期待を持ってオーダーしていなかった分、喜びも大きく、とっても得した気分♪
後ろの席の常連さんらしき方が注文していた、チャーハンや広東麺もおいしそうだったなぁ…。
 
こちらのお店はご夫婦お二人で切り盛りされているのだが、厨房の様子もとても好ましかった。店の表で列をなしている、結構な人数のお客さんをお二人でさばくのはなかなか大変だろうに、それを微塵も感じさせない落ち着いた所作と丁寧な接客。ラーメンはご主人、餃子は奥様と役割分担されているようだが、きちんと言葉を交わして確認しつつ、阿吽の呼吸でてきぱきと作業を進めていく。家族経営のお店では、身内ゆえのざっかけないやりとりが、どうかするとぞんざいで乱暴に聞こえたりするけど、終始穏やかで、忙しなさを微塵も感じさせない。プロだなぁ。
 
ところで前回の函館では名店・「星龍軒」さんを訪問し、その家庭的で温かみのあるお店の雰囲気に寛ぎ、清らかな黄金色のスープに折り目正しく沈む塩ラーメンを堪能した。が、今年の春にこちらのお店は閉店してしまっていた。閉店は知っていたものの、偶然お店の前を通りかかったら、お品書きが出窓に飾られていてしんみり。
DSC_0076DSC_2156
DSC_0075

「滋養軒」さんのそれとはまた違う美味しさで、毎日でもいけそうなあっさりとした、しかし五臓六腑に染み渡る奥深い旨さに唸り、個人的には函館に来るたびに行ってもいいと思うくらい好きな味だった。残念極まりないが、閉店してしまう前に一度でも食べておいて良かったのかもしれない。

どんなに美味しく素晴らしい料理でも、人の手で生み出されるものである以上、いつ何時でも味わえるものではない。食もまた一期一会であるなぁ、と感じる。わけても旅先では。

ごちそうさまでした。

滋養軒ラーメン / 松風町駅函館駅前駅函館駅
昼総合点★★★☆☆ 3.5