無芸大食・読書亡羊~美味しいものと本と旅~

美味しいものと本と旅が至福であり、生きがい。インスタ映えや星の数じゃなく、自分がいいと思えたものとの出会いを綴ってゆきたいです

銀座「教文館・ナルニア国」~タンスの奥で待つものは~

待ち合わせや次の予定までに、ぽっかり時間が空いてしまった時の暇つぶしはもっぱら本屋さんですが、そこが銀座ならば迷わず「教文館」さんの6階「ナルニア国」へと足を向けます。

「教文館」さんキリスト教に特化した書籍の出版社・書店で、自社ビルでもある教文館ビルは、キリスト教を始めとする宗教関連書籍やキリスト教グッズを販売するフロアを有しています。しかし、本屋さんですから一般書籍のフロアもありますし、私のようなキリスト教とは無関係の一般人ももちろん利用出来ます。

子どもの本に特化した6階の「ナルニア国」は、私的には心落ち着くヒーリングスポットと言えるかもしれません。店名の「ナルニア国」という響きだけでもワクワクしますが、ちょっとレトロなビルの雰囲気も相まって、お店の入口に足を踏み入れる時は、それこそタンスの奥にある「ナルニア」に通じる入口に立つような気分になるのです。字を覚えたての幼児向けの絵本から、小学校高学年向けまで幅広い年齢層をカバーしているほか、絵本雑誌の「MOE」など大人向けの資料もあり、年齢問わず興味を持って楽しめる場所だと思います。





ワンフロアにほどよい間隔を取って配置された本棚は、ちょうど子供の背の高さぐらい。本の表紙を眺めているとそれを読んだ時の気持ちや情景がありありと浮かんで、懐かしさでいっぱいになります。おばけの顔が怖かった「ねないこだれだ」、当時はミッフィーではなく「うさこちゃん」、外国らしい挿絵が印象的だった「おおきなかぶ」や「もりのなか」、「おやすみなさいのほん」。







山脇百合子さんと実姉・中川李枝子さんの最強コンビ「ぐりとぐら」や「そらいろのたね」、石井桃子さんの名訳に子ども心に切なさが胸につまった「ちいさいおうち」、大好きだった「ひとまねこざる」(レイ夫妻版)、シュールな設定がたまらなかった「すてきな三にんぐみ」、謎とき手紙を真似した「きょうはなんのひ?」、夢中になって読んだ「大どろぼうホッツェンプロッツ」・・・。何度も読んだからこそ、思い出もひとしおです。




すてきな三にんぐみ
トミー=アンゲラー
1969-12-16




小さな頃に味わった感動や、当時は言葉に出来なかったような特別な感情は、きっと自分でも知らないうちに心の奥底に仕舞われているのだと思います。毎日を忙しく過ごす私たちは普段それに気を取られることもありませんが、ナルニア国が洋服ダンスの奥に通じていたように、本当は私たちの中にもその感情につながる扉はあって、子供の頃に読んだ本や漫画は、その扉を開けるスイッチのようなものだと思うのです。

童心に帰るだとか無垢な心を取り戻すとかいう御託以前に、子供の頃に読んだ本や漫画には、単純に頭を真っ白にして、心だけが動かされるシンプルな感情を呼び覚ますよすがとなる力があると思います。
ちょっと行き詰ってしまったり、悩んで頭がパンクしてしまいそうな日には、絵本や漫画を手にとって、こんがらかった頭を真っ白にする時間を作ってみるのもいいかもしません。
 
フロアの奥の一角「ナルニアホール」では定期的に講演会や展示会が開催されており、私が訪れた日には「長くつ下のピッピ」などで知られるリンドグレーン展を無料開催していました。
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大人もつい手にとってしまうような絵本のキャラクターグッズも豊富で、この日はとうとう大好きな山脇百合子さんのポストカードブックを買ってしまいました。可愛すぎて、使うのがもったいなくなるに違いないのですが。
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教文館の9階ウェンライトホールで開催されていた「藤城清治影絵展」も見ました。藤城清治さんの影絵には幻想的でファンタジックというイメージしかありませんでしたが、金閣寺軍艦島、大曲の花火や大阪都市など、国内の風景を独特のタッチで描いた日本情景は迫力があって、新鮮な感動を覚えました。
3階の「エインカレム」はキリスト教カードやグッズを取り扱っているお店ですが、この日は藤城清治展と連動したグッズが販売されていて、思わずメモパッドを購入。
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この日はいつもよりゆっくり過ごして、すっかり楽しい気分になりました!何度訪れてもワクワク出来る、私にとっての大切な「ナルニア国」なのでした。