無芸大食・読書亡羊~美味しいものと本と旅~

美味しいものと本と旅が至福であり、生きがい。インスタ映えや星の数じゃなく、自分がいいと思えたものとの出会いを綴ってゆきたいです

表参道「ア・ピース・オブ・ケイク」~黄金配合のパンケーキ~

その昔は、私もいっちょまえにお菓子作りに手を出しことがあったのです。クレープやスポンジケーキなどの簡単なおやつ程度でしたが、当時花形だった城戸崎愛さんや入江麻木さん、そして「ア・ピース・オブ・パンケーキ」さんのオーナー、大川雅子さんらお菓子研究家の方々のレシピと首っ引きで、週末になるとキッチンでガチャガチャと格闘していました。

さて、大川雅子さんと言えば、パンケーキ。小原流会館の「ふーみん」さんでのランチ後、懐かしさに惹かれて岡本太郎記念館に行きました。骨董通り沿いは、同じく大川さんのパンケーキ専門店「APOC」さんや、「クリントン・ストリート・ベーキング・カンパニー」さん「グラニー・スミス」さんなど甘いものには事欠かないのですが、太郎さんのオブジェを眺めながらのお茶の時間も、また一興です。

◆ パンケーキ(バターミルク、グレイン)
昔頂いたことのあるお菓子のいくつかはメニューから消えていましたが、パンケーキはもちろん健在で、バターミルク、グレイン、コーンミール、チョコレートの4種から2種を選んでオーダーすることができます。
 
IMG_2635

バターミルクの軽くてしっとりとした口当たり、もちっとした食感、リッチな風味。黄金配合と呼ばれるパンケーキの、安定の美味しさに改めて感じ入りました。独特の香ばしさが身上のグレインも、また違った趣で美味。すっと儚く消え、豊かな香りの余韻を残すフレッシュバター、グランベリージャム、八分立てのクリーム、メイプルシロップ、と添えられた4品で、一口ごとに味を変えながら楽しめます。
カフェメニューとしてもすっかり定番となったご時世、パンケーキに殊更思い入れがなくとも口にすることは多いのですが、やっぱりAPOCのパンケーキの味と質感は特別だなぁ、と再認識しました。
 
◆ アップルパイ
アイスは要らないかな?と呟いたら、お店のスタッフの方に断然オススメ!とされ、アイスクリームを乗せたア・ラ・モードで頂きました。繊細に層が重なったサクサクのパイに、ぎっしりとフィリングが詰まったリッチな味わいで食べごたえも十分。フィリングのりんごの甘さ加減も丁度良く、パイに添えられたプルーンの紅茶煮と、りんごのコンポートの美味しさも、特記すべきポイントです。
 
IMG_2636

辛党の私がかつてお菓子作りに夢中になった理由は、耳慣れない名前のついた製菓材料への憧憬と、未知の味に出会う面白さにありました。今では馴染みある単語と化しましたが、私が小学生の頃には、ピーカン、メイプル、コアントロー、グリオットチェリー、アンゼリカ…などの製菓材料は、どれもが蠱惑的とも言える響きであり、魅惑の味だったのです。

パンケーキにおけるそれは、「バターミルク」。字面も響きも、優しげで豊かなイメージを喚起させ、私は今でも「バターミルクパンケーキ」と聞くと衝動的にオーダーせずにはいられないのでした。(ちなみに、次点は「リコッタパンケーキ」。旭川「ちろる」さんで迷わずオーダーしたのも、むべなるかなです)

「ア・ピース・オブ・ケイク」さんでは、自宅でこの味を簡単に再現することができるパンケーキミックスも販売されているのですが、かつてお菓子作りに励んだ私はもういません。こうしてたまに思い立って食べに出かけ、改めてパンケーキの美味しさに瞠目するのが、今の私にはちょうど良いのでした。
 
IMG_2637
IMG_2633

太郎さんの「太陽の塔」と「河童」君に挨拶を済ませたら、おいとまです。ごちそうさまでした。


ア・ピース・オブ・ケイクカフェ / 表参道駅乃木坂駅
昼総合点★★★☆☆ 3.5