無芸大食・読書亡羊~美味しいものと本と旅~

美味しいものと本と旅が至福であり、生きがい。インスタ映えや星の数じゃなく、自分がいいと思えたものとの出会いを綴ってゆきたいです

富山市「富山ガラス美術館 TOYAMAキラリ」~建物も作品も、キラリ~

「FUMUROYA CAFE」さんですっかり元気を取り戻したので、早速美術館内を見て回ります。

富山でなぜガラスなのか。それは、この県が「富山の売薬」で知られる薬都であることと、関係するそうです。そう、昔はガラス製の薬瓶の需要があったのですね。もちろん袋や缶に入った薬もあり、富山には薬の包装容器から始まった関連産業は多いんだそうです。そういえば、飴屋さんが多いのも、薬の苦さを和らげるために薬売りが飴を持ち歩いたり、麦芽水飴が薬の原料に使われたりしていたからだとか。
 
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富山市ガラス美術館、通称TOYAMAキラリに来たかった理由のひとつは、隈研吾さんのデザインによるビル建築を見たかったからです。御影石とガラス、アルミの組み合わせで構成されたファサードは、立山連峰をイメージしているそうです。日中は日の光を、夜は街の灯りを反射して、キラキラと控えめに瞬くのが綺麗でした。

内装は、富山県産材のルーバーを活用した木の温もり溢れる空間で、吹き抜けから明るい光が降り注ぎ、フロアごとはもちろん、各階の見通しも良く、とても開放的です。この建物の3階から5階の半分は、富山市立図書館となっています。
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旅先で、自分がこの土地に暮らしたら…という想像を巡らすことがよくありますが、もし富山市民だったらこの図書館に入り浸りだろうなぁ、と市民の皆さんを、羨ましく感じました。

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実は隈研吾さんは、浅草雷門の前にある、浅草文化観光センターのデザインもされていて、両者の類似点(特に内装)がよくわかります。
 
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富山市ガラス美術館の目玉は、現代ガラス美術の巨匠といわれるデイル・チフーリ氏による、ガラスを用いたインスタレーションです。6階にある「グラス・アート・ガーデン」と呼ばれる展示場には、富山の自然からインスパイアされた作品が展示されているのですが、ガラスの特性を活かしたしなやかなライン、光を当てた時に出来る陰影の美しさ、鮮やかな色使いから生まれる幻想的な世界に、ぐいぐいと引き込まれました。

シャンデリアは、深緋(こひき)、瑠璃(るり)、鬱金(うこん)という日本の三色の伝統色がタイトルになっているそうです。
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特に瑠璃が素敵でした。
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植物の葦(あし)を意味する、Toyama Reedsという作品。
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Toyama Persian Ceilingは、約400個のガラスパーツが、天井に敷き詰められた作品。作者の「Persian」という渦巻状のガラスを使った作品があるのですが、同じ形状のガラスが入っているから、このタイトルなのでしょうか。天使や貝殻のモチーフもあり、ヨーロッパの天井画を連想してしまいました。
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Toyama Float Boatは、富山市を流れる神通川の漁で使用されていた笹舟に、117個の色とりどりのFloat(浮玉)が配されています。ヨーヨーのようにも、惑星のようにも見えます。
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Toyama Mille Fiori。Mile Fioriはイタリア語で千の花という意味だそう。見る角度によって、印象が変わる面白い作品でした。
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この他、4階の常設展示場にもガラス工芸作品が展示されていました。こちらは撮影禁止のため写真は撮れませんでしたが、ガラスの冷たさを感じさせない温もり溢れる作品や、どうやってこれを作ったの!?とその技術に見入ってしまう作品など、目を楽しませてくれるものばかりでした。鑑賞に予想以上の時間を使ってしまい、帰る頃にはもう日が落ちていました。

富山県立近代美術館と、この富山市ガラス美術館、2ケ所を満喫出来て、大満足の一日となりました。