無芸大食・読書亡羊~美味しいものと本と旅~

美味しいものと本と旅が至福であり、生きがい。インスタ映えや星の数じゃなく、自分がいいと思えたものとの出会いを綴ってゆきたいです

西荻窪「モロッコレストラン tamtamu」~こんな時こそいつものお店で~

チェーン店ではなく個人経営且つ小体な店構えの飲食店が多い西荻窪では今、#西荻窪お持ち帰りグルメ なるハッシュタグが急増中。様々な知恵を絞って新型コロナウイルス対策をしつつ営業を継続されていたが、外出自粛要請が出てからは3密を避けて店内での飲食することを控える方が多くなってきたため、テイクアウト販売をスタートさせる店が一気に増えたのだ。そして、西荻大好きな地元民たちが、こぞって各店のテイクアウトメニューを紹介しあうという。素敵すぎるハッシュタグ
 
現在在宅勤務中の私も、毎日最低一回はどこかのお店でテイクアウトメニューを購入するようにしている。微力ながらも、愛する西荻窪の飲食店の皆さんを応援したい一人なのだ。ハッシュタグと共に記録しておきたいと思う。
 
モロッコレストランtamtamuさんは、同じ西荻窪内で3月に移転オープンしたばかり。前の住所で営業されていた2月末にお伺いした時には、今ほど深刻ではなかったものの、既にコロナの心配が出始めていた時期だったので、新しい門出にあたり不安を語っていらした。
 
もともとハリラスープ等のテイクアウトは可能だったけれど、このような事態になって、テイクアウトできるメニューを広げられたようだ。

f:id:nomarie:20200406181541j:plain

 
◆ハリラスープ
初めて訪問した2013年以来、必ずオーダーするお気に入り。もともと現地ではラマダン明けに食べるというポピュラーなスープだそう。野菜と豆を煮込んだポタージュ状のスープで、インドのサンバルにも似たとろみ感があるが、より滋味深く、野菜と豆の風味がぎゅうっと凝縮されている感じ。疲れているときなどは殊更胃に染み渡る、栄養たっぷりのお助けスープ。お店でサーブされるときはこんな感じ。

f:id:nomarie:20200406181334j:plain

 

◆ラムのタジン
ロッコ料理におけるスパイスは、辛味を加えるためのものではなく、風味を豊かにするためのものというのが私の印象。辛い料理は殆どなく、ほどよく効かせたスパイス感で、トルコ料理同様誰でも親しみやすい料理ではないかと思う。タジンも然り。油も余計な水分も用いないタジン鍋による無水調理なので、野菜と肉の旨み・風味が半端なく、ほっとする味わいの煮込み料理だ。たっぷり入ったラム肉は柔らかく火が通っていおり、大ぶりのゴロゴロ野菜はどれもほくほく!(盛り付けセンスは無視してほしい)

f:id:nomarie:20200406181451j:plain

タジンのテイクアウトメニューはこの他にチキン、牛肉、ミートボールなどもあり、いずれもオーソドックスなタイプだが、普段お店で提供される季節ごとのタジンがこれまた絶品で、私はこれの大ファン。中東らしいナッツやドライフルーツとの組み合わせが最高で、思い出すだけでうっとりしちゃう。

f:id:nomarie:20200406181715j:plain

写真は「ラムとサツマイモとプルーンのタジン」だが、「イチジクとアーモンドと牛肉のタジン」や、「栗と胡桃とチキンのタジン」なども忘れがたい美味しさ。お店に伺えるようになったら、ぜひまた!
 
◆パンの盛り合わせ

f:id:nomarie:20200406181742j:plain

ロッコ料理のお供は、やっぱりパン!ハリラスープタジンはもちろん、フムスとも。お店ではこんな風に。
 
◆ハルヴァのチーズケーキ

f:id:nomarie:20200406181823j:plain

頂いたことがないデザートだったのでテイクアウトしてみた。お店のTwitterの説明曰く「胡麻やナッツを使った和菓子のようなポロポロとしたスイーツ」を「レアチーズケーキ風に」作ったものだそう。甘さ控えめ、澱粉質の独特の食感で、派手さはないのになんだかクセになる一品。次もまた頼もうっと。
 
テイクアウト対象ではないが、過去に頂いた料理にはこんなものも。
 
◆ラム肉のハンバーグ

f:id:nomarie:20200406181941j:plain

「tamtamu」さんは、とにかくラムが美味しい。こちらもタジンを用いているのでふっくらジューシー、ラムが苦手という方も、ハンバーグならとっつきやすいのではないかと思う。
 
◆ブリック

f:id:nomarie:20200406182112j:plain

パリッパリの皮を割ると、マッシュポテトがぎっしり、卵がとろーり。これ、絶対みんな好きなヤツ!私も大好き。
 
◆モロッコイカ

f:id:nomarie:20200406182758j:plain

ムール貝

f:id:nomarie:20200406182856j:plain

 

下記は旧店舗に伺った際の写真。新店舗も雰囲気はそのままながら、かなり広く、内装も素敵になっていた。お店に出向いて食事をするという行為は、料理を味わうことはもちろんだけど、こういったお店の雰囲気や、食器や盛り付けの美しさ、店内を満たす香りやお店の方との会話なども含めてもたらされる高揚感を味わいに行くことでもある。この混乱極まる事態が収まり、また予約を入れられる日が来ることを切に願う。

f:id:nomarie:20200406183006j:plain

ごちそうさまでした。
 

タムタムアフリカ料理 / 西荻窪駅
夜総合点★★★★ 4.0

 

在宅勤務、私の場合

新型コロナウィルスCOVID-19感染予防のため、勤務先の指示により2月末から在宅勤務になっている。外資系企業なので、時差のある国とのコミュニケーション上の必要性とワークライフバランス推進により、リモートワークはもとから珍しいものではなかったけれど、1か月以上もオフィス出勤がない事態は異例だ。更に、この措置は5月連休明けまで継続との指示も出ている。
 
元来自宅と地元西荻窪周辺で過ごすのが好きなタチので、家に居ろと言われても平気で、在宅勤務はさほど苦ではない。もちろん、気軽に人と会えないし美味しいもの探訪や旅行は我慢、といった不便な点も多々あるけれど、私自身と、私の家族や周りの人への感染を回避出来ることを考えれば、些細なこと。せっかく有難い環境に置かれているのに、私がウィルスを貰ったり巻き散らす暴挙に出るなんてもってのほかだ。
 
むしろ私が憂いているのは、最前線で戦っている医療や介護に従事されている方々、そして公共交通機関や生活必需品販売店・宅配業者・ごみ収集業者など、私の生活を支えてくれている様々な職種の方々の安全。そして、私の人生を豊かに彩ってくれている、美味しいものを生み出す飲食店・映画や音楽などのエンターテイメント・ホテルや観光地関係者の方々の生活だ。世界各国のニュースを見れば深刻且つ長期戦が予想される事態であるのは明白なのに、精神論発言が飛び出す楽観的な姿勢で、有効な政策を打ち出してくれない国に生きる不安ばかりが募る。
 
マスク2枚なんて要らないから、どうか人と接さざるを得ない方々に、十分な不繊布マスクや消毒用品防護服など命を守るための物資を。そして私たちが命を守るための外出自粛によって生活の糧が脅かされないよう、休業を余儀なくされた方々への手厚い補償を。切に願っている。
 
これはぜんぜん綺麗ごとなんかじゃない。晴れて事態が収束したとしても、失ったものが大き過ぎたら、その後の生活だって立ち行かなくなる可能性大なのだ。病気をしたり介護が必要になっても助けてくれる人はいない。美味しいものを食べに行けるようになったって、その店が潰れてしまっていたら元も子もない。そんなのは絶対嫌だ。彼らを今救えなかったら、ゆくゆくは自分にそのツケが回ってくるのだ。
 
あぁ、多額の寄付をしたリアーナやロナウドのような財力が私にあれば、彼らを救える一助になれるのに…!と歯がゆい思いが日増しに強くなるが、悲しいことに私の経済力ではそうはいかない。手が届く範囲でできることをしていくしかない。
 
例えば、愛する西荻窪の飲食店の皆さん方は様々な工夫を凝らして営業を続けておられるので、一日最低1回はそれらの店から順にテイクアウトをしている。ゆっくり過ごすべき空間の喫茶店はどうしたら…と思っていたら、終息後も無期限で使えるコーヒーチケットを先払いで購入できるシステムを取り入れたお店を知った。それはいいかも。フレンチやイタリアン、鮨、焼肉、焼鳥、鮮魚居酒屋などテイクアウトが難しい業態のお店なども、予約確保する代わりに先払いできるような方法が取れればいいのだけれど…。
 
また、幸い西荻には対面型の個人商店も多いので、野菜や肉、豆腐などは極力個人商店で購入している。大型スーパーのような混雑(自粛要請が出てから一回も行ってないけれど大変混んでいるらしい)はないし、並ぶとしても屋外なので安心だ。常日頃からささやかながらも地元のお店は応援したいと努めてきたものの、平時の勤務状況では個人商店の営業時間に間に合わないことも多い。昼の休憩時間にサクッと行けるのも、在宅勤務ならではの恩恵だ。
 
そしてもう一つ大事なのは、罹患していないであろう今こそ、更に努めて心身を健康に保つことだろう。風邪を引いたり体調を崩し免疫力が低下してしまったら、それこそウイルスの格好の餌食になってしまう。コロナであれ他の疾患であれ、とにかく医療機関を煩わすような傷病者にならないことも、私が出来る貢献の一つだと考えたい。
 
在宅勤務は運動量の少なさも気になるが、外出要請で気が塞いだり不安が高じて眠れなかったりするメンタル面での負担にも気を付けたい。通勤時間や身支度(オフィシャルver.の化粧や身だしなみ)の時間はそのまま十分な睡眠時間に充てられるし、愛犬と過ごす時間、大好きな読書や映画鑑賞に没頭できる時間も生まれた。深刻な事態であることは理解しつつ、このような状況下で生まれた有難い副産物をポジティブにとらえて、過ごしている。
 
 

神保町「ドース イスピーガ (Doce Espiga)」~このパステル・デ・ナタも好き~

お盆前の平日に休みが取れたので、朝から大好きな街・神保町へ。午後には売り切れてしまうという噂もあるポルトガル菓子の店「ドース イスピーガ(Doce Espiga)」さんがお目当てだ。

f:id:nomarie:20190826005611j:plain


この時まだ11時前。なのにパステル・デ・ナタ(ポルトガルのエッグタルト)の残りは僅かで、なんと私の希望数3個を購入したら売り切れとなってしまった…。朝7時からの営業とはいえ、そんなに皆早朝からゲットされるんですか…?
 
パステル・デ・ナタ
バターが香る生地はしっとり過ぎず、サクサク過ぎずの食感。溢れんばかりのカスタードクリームがとにかくリッチ!きちんと甘いのに、甘さが勝っていてしつこいわけではなく、口の中に入れたひとくち分にうっとりして、いつまでもそのままにしておきたいような、上質な濃厚さがギュッと詰まってる。

f:id:nomarie:20190826005617j:plain

パステル・デ・ナタと言えば、代々木公園の「ナタ・デ・クリスチアノ」さんが有名で、私も大好き。あちらのパステル・デ・ナタは、パリパリと音がするような幾重にも畳まれた層からじゅわじゅわとバターが染み出すクロワッサンにも似た生地だけど、「ドース イスピーガ」さんの方がタルト感を感じる。フィリングのカスタードの卵感は「ナタ・デ・クリスチアノ」さんの方が強いかな。しかし、どちらもそれぞれ美味で甲乙つけがたいなぁ。
 
◆チーズとアーモンドのお菓子

f:id:nomarie:20190826005613j:plain

正式名称あったかな?こちらもアーモンドプードルたっぷりで、小さくてもしっかりとした食べ応え。甘さは控えめで、アーモンドプードルの風味とチーズの塩気がワインにも合いそう。敢えて言えばベイクドチーズケーキに近い風味だけど、カッテージチーズのような軽やかなチーズ感とアーモンドプードルの風味で、重たく感じない。
 
◆セジンブラの焼菓子

f:id:nomarie:20190826005615j:plain

セジンブラというポルトガルの半島の先にある町の郷土菓子だそう。シナモン入りと聞いて即決買い。硬くなるので冷蔵庫に入れるのは避けてねと伺った通り、エナジーバーのような密度の高いお菓子で、甘さもしっかりめ。そもそもカステラの原型であるパォンデローといい、ポルトガル菓子は力強い甘さがスタンダードらしいので、これが正統なんだろうな。シナモン入りのお菓子は好きだけど、私にはちと甘めでした。(写真ブレブレ…😢)
 
それにしてもパステル・デ・ナタは美味しいな!喫茶店での楽しみは無限の神保町にあって、伯水堂は閉店してしまったし、「Styles Cakes & Co.」さんぐらいしか持ち帰りお菓子の楽しみがなかったけど、これからはこちらも”自宅でのお楽しみ”に加えられる!またいっそう神保町が好きになっちゃうな―。
 
ポルトガル菓子関連記事
 

ドース イスピーガ洋菓子(その他) / 小川町駅新御茶ノ水駅淡路町駅
昼総合点★★★☆☆ 3.5

国立「ダバ☆クニタチ」~この、幸せな空間と時間~

もうすっかり冬になってしまったが、これは全ての気力を奪われるような蒸し風呂の暑さが続く季節のお話。

この日は国立の「ダバ・クニタチ」さんに。カレー店というと、ゴージャスでエキゾチックな異国風か、照明を絞った店内で席間狭め、のどちらかのイメージが強いが、白くペイントされた店内にはダージリン急行の映画ポスターや、安西水丸さんの絵が飾られていて、このセンスが新しくて好きだ。といっても、トンガってるわけではなく、コージ―且つ明るくて居心地が良く、長居してしまいそうな雰囲気だ。
20180715 ダバクニタチ (12)

驚くべきはそのメニューの多さ。目にした限りではキッチンとフロアをそれぞれお一人ずつで切り盛りしているのに、カレーの種類のみならずライスの選択肢が6種類もあるなんて見たことない!おまけにサイドメニューも充実している。頂く側としては迷う楽しさが増えて願ったり叶ったりだが、こんなに引き出し一杯開けちゃって大丈夫なんですか?!と要らぬ心配も頭をよぎるほどだ。

この日は夜遅めの時間に伺ったけど、お店の外に席待ちの人もいて、同行者が予約してくれていなかったら入店できなかった。残念なことに、ベジタブルピクルスライタ炒め野菜入りキーマカリーなど、野菜を使うメニューが全て売り切れ。国立って都内とはいえ、馴染のない人には結構アウェイ感のある土地だと思うんだけど、結構人気のお店なんだなぁ。

◆クニタチ(all国立産の食材で作った酵素ドリンク)
写真を撮り忘れたけど、これがスッキリした飲み心地でとても美味しかった。この日は梅、人参、トマト、コリンキー、ビーツ、ケール、大根の葉、ミント、オレガノ入り。酵素のパワーで、これから出てくるお料理を迎え撃つ準備は万端!

◆サモサ
20180715 ダバクニタチ (11)
実家の母がサモサをよく作ってくれる人だったので、メニューにあると頼んでしまうのだけど、なかなか「これ好き!」と思うものに出会えない。が、「ダバ・クニタチ」さんのサモサは、瞬殺で気に入った!添えられているディップがまた気の利いた味わいで、この最初の一品だけでこのお店の間違いなさを確信した。

◆マトンペッパー(マトンの黒コショー炒め)
20180715 ダバクニタチ (7)
黒胡椒が爽やかな辛味。これ好きだ―♪

◆日曜限定のチキンビリヤニ
20180715 ダバクニタチ (5)
同行者はこれがお目当てで日曜の夜に予約を入れたのだ。真ん中に茹で卵が入っていて愛らしいビジュアル。こんなにカレーやライスの種類が多いのに、ビリヤニまで手掛けるその熱量に脱帽…。

◆ラッサム
ビリヤニと共に同行者がオーダー。もうご飯とお味噌汁状態だね。

◆ローガンジョシュ(北インドのスパイシーなマトンカリー)
20180715 ダバクニタチ (2)
Wマトンメニュー(笑)。コク深いのに、どっしりした重さがなくて爽やか。そのバランスが絶妙で、うっとり。

◆レモンライス
20180715 ダバクニタチ (13)
レモンの爽やかさと軽やかさが、スパイス感が強く、旨味ギュッ、の濃度高めのカリーに、恐ろしく好相性だったレモンライス
ラッサムライスや、カッテージチーズとキノコのライスなど、他のライスメニューも蠱惑的で、絶対全部制覇する!!

◆エッグプラントライス
20180715 ダバクニタチ (6)
先日「エリックサウス東京ガーデンテラス店」さんで頂いてトリコになった揚げ茄子のライス、こちらでも再会出来て嬉しい♪ココナッツも入っているので、食感も楽しく香り高さもアップ。絶妙な炊き込み加減で、これ一皿でも全然イケる。

◆カルダモンアイス
20180715 ダバクニタチ (8)

「ダバ・クニタチ」さんの魅力は、そのメニューの多彩さだけではない。料理は全て間違いなく本格派の味わいなんだけど、なぜだか洋食屋さんでご飯とおかずを頂いているような親しみやすさを感じる点だ。エスニックだ、インドの××風だなどと大上段に構えずとも、このスパイス感溢れる料理の数々は、もはや日本の日常食なんだなと強く感じられるのだ。

決して、味を軽んじているわけではない。むしろ物凄く手がかかっているんじゃないかと思う深い味だ。なのに、「こんだけやってるぞ、どうだ!」というストイックさが前に出た威圧感もなければ、「自分流を貫くんで、わかってくれる人だけヨロシク」みたいな、孤高を気取る近寄りがたさも全然ない。そこが、素敵だと思う。

例えるならば、町の皆が大好きな、地元の洋食屋さんで供される洋食店。実は店主は長く経を積んだベテランフシェフで、その細やかな技と膨大な手間によってたくさんのメニューが生み出されているんだけど、でもそんな様子を微塵も感じさせない感じ。「ダバ・クニタチ」さんにも、そんな近しさと間口の広さを感じる。お店の雰囲気が加味されているとしても、これって狙ってできることじゃないからこそ、カッコいい。
 
最近はカレーに限らずラーメンや色んなジャンルで「極められてる」傾向で、そのこと自体はちっとも悪いことじゃないんだけど、もしや「(この世界観が)分かる人」「(この値段でも)出せる人」向けの見えない入口があるんじゃ…?と、心理的な敷居の高さを感じさせるお店はもったいないなぁと思う(大きなお世話だが)。

美味しいものを頂くと、幸せな気持ちになれる。だから、食事の時間は楽しくありたいものだ。
作ってくれた人とその料理にはリスペクトを持って真摯な気持ちで向き合いたいとは思うけれど、緊張を強いられたり、居心地の悪さを感じながら食事をするのは、なんだか違う、と私は思っている。

「ダバ・クニタチ」さんの、食堂然とした居心地の良い空間の中で、丹精込めたとびきりのスパイス料理を味わえるのは、間違いなく幸せだ。

ごちそうさまでした。

ダバ☆クニタチインドカレー / 国立駅
夜総合点★★★★ 4.5

新橋「ビーフン東」~昼の新橋、やっぱりサイコー!~

私が社会人になって初めての勤務地は、ご存知サラリーマンの聖地・新橋だ。昔から働く人々のランチ天国でもあったが、今尚メディアでもたびたび取り上げられるほど、安くて美味しく、チェーン店ではない個性的なランチスポットが林立している。

今も新橋勤務だったらその恩恵に与って、毎日のランチタイムが楽しみでしょうがないんだろうが、
若かりし当時はその良さが分かっておらず、銀座方面のこじゃれたお店でばかりランチしていた。なんて馬鹿な私・・・。雑誌で組まれていたランチ特集を読んでいたら、いてもたってもいられず、この日はいそいそと新橋の「ビーフン東」さんへ。
 
汐留が出来て駅の北側の眺めは変わっても、新橋駅の周辺はちっとも変わらず雑多な雰囲気を保っている。駅とその周辺は、バリアフリーでアクセスしやすく、綺麗であってほしいが、駅舎のデザインが似ていたり、駅周辺のチェーン店がお馴染みのものばかりだからなのか、街の顔の代表である駅周りの様子が、没個性的になりつつある昨今。一方で、新橋を含む山手線沿線のいくつかの駅は、まだどことなく昭和っぽさを残していて、その変わらなさに安心する。

その良き昭和感を感じさせる要因のひとつは、南口のニュー新橋ビルや、
「ビーフン東」さんの店舗が入っている新橋駅前ビルなどの、古からのビルだろう。意味もなく怪しさを醸す全体的に暗めの照明、レトロ建築特有の冷たい石の手触りなど、ちょっとしたタイムスリップ感さえ感じる館内で、活気づく飲食店の賑わいが対極的で、すごくいい感じなのだ。

私と同行者も、駅前ビル1号館のせまくて古いエスカレーターを2階に上がり、
「ビーフン東」さんへ。同じフロアには、これまた人気店の「七蔵」さんも。このお店、昔は地下にあったんじゃなかったっけ・・・。

五目ビーフン(汁) 
DSC_0041
五目ビーフ
は汁ビーフンでオーダーした。白菜、豚肉、海老、筍、人参、ピーマン、きくらげ、ウズラ…と、五目どころか八
目の具がざくざく入り、食べごたえ十分。美味しいスープをたっぷり吸った主役のビーフは、
大きめの具材にもスープの味にも負けない存在感だ。他店でたまに遭遇する、汁気を吸ってのび切った素麺みたいな頼りないビーフンとは別物で、むしろ十分に水揚げされた茎のような、のびのびとしたしなやかさを感じる。ビーフってこういうものだよねぇと、ビーフの美味しさがよくわかる一皿だと思う。

◆蟹玉ビーフン(焼き)
DSC_0038
一方、卵のふわふわが汁気を吸ってしまうのがもったいない気がしたので、蟹玉ビーフは焼きで。誰もがよく知る、町中華の蟹玉のあの旨さが、
炒めてしっとりとなったビーフンに絡みつく感じがたまらない。決して濃い味ではないのだが風味豊かで旨味も強く、私は焼きの方がより好みだ。

DSC_0037

◆パーツァン(中華風ちまき
DSC_0039
ビーフ
と並ぶもう一つの名物・パーツァンは、うずらや角煮などの中の具が大きいため、当然本体も拳大以上のビッグサイズ。こんなに大切りの角煮が入ったち豪華なちまきは、めったにお目にかかれない。
こちらはビーフと違い、八角の香り漂う甘じょっぱい味がしっかりめについていて、1個でお腹いっぱいになる。

DSC_0040
周りの皆さんはそれを承知で、パーツァンと一緒に
オーダーするビーフは小サイズだ。なるほど。パーツァンと、普通サイズのビーフをぺろりと頂いた我々は、夕方になっても一向に空腹を覚えない、その腹持ちの良さに後々驚かされることになるのだった。

ランチタイムのピーク前からどんどんお客さんがやってくるが、サラリーマン(敢えてオフィスワーカーとは書かない)のランチ秘技である超早食いが多い上に、このお店にこれだけ・・・と思うほどの厨房の方+きびきびとフロアをさばくスタッフの方の連携で、客席の回転もガンガン流れてゆく。

この、一見忙しなさそうで秩序あるお店側のリズム感と、昼休みのいっときの解放感が醸す、お客さん側の肩の力が抜けたリラックス感。これが働く人々のランチタイムの空気感だよなぁ、となんだか楽しくなってしまった。夜の新橋もいいけど、やっぱり昼間の新橋が一番好きだな。

ごちそうさまでした。

ビーフン東台湾料理 / 新橋駅汐留駅内幸町駅
昼総合点★★★★ 4.0

福井県福井市「ヨーロッパ軒総本店」~ココ目的での再訪必須~

豚肉料理の中では、とんかつと生姜焼きが断然好みだ。とんかつ好きなら当然カツ丼も好きで、自分のなかでは、『とんかつを食べに行く店』と『かつ丼を食べに行く店』には明確な区別がある。卵でとじた甘辛味の王道かつ丼はむろん、ソースカツ丼駒ヶ根verも福井ver共に)も大好きな私ゆえ、「福井のソースカツ丼を頂く」ことは、今回の福井旅の重要なミッションでもあった。

目指したのは、「ヨーロッパ軒総本店」さんだ。福井バージョンのソースカツ丼西荻窪ゆきとら」さんでも頂いたことがあるが、ソースカツ丼の発祥店とされる「ヨーロッパ軒総本店」さんに行かずして、福井を去るわけにはゆかないのだ。

DSC_0288_HORIZON
午前中に勝山の平泉寺白山神社を巡っていたので、移動スケジュールの関係でお店の前に着いたはちょうど昼過ぎ。空腹を宥めながら苦手な行列に並ばなくてはならなかったのは痛手だった。そりゃ人気店だもんね。しかし、店内に2階席もありキャパが広いのか意外と回転は早く、苦行は30分で終わり、救われた。(お店の外観写真は食べた後に撮ったもの。到着時は20組ぐらい並んでいた)

待っている間、前後に並んでいる人たちの会話を聞くともなしに聞くと、関西圏からのお客さんが多いようだ。東京に住んでいると、物理的にも心理的にも遠く感じる福井だが、関西圏にお住いの方なら車でパーッと出かけて食べに行ける距離なんだろうな。羨ましい…。

◆カツ丼(ソースカツ丼) 
DSC_0284
予め同行者と決めておいた通り、カツ丼ビーフカツ丼をオーダーしてシェア。セットのサラダはマヨネーズがかかっているタイプだそうで、マヨネーズなし、あるいは少なめで
オーダーできるようメニューに記されているのが、小さいことだがとても気が利いている。マヨネーズ味のサラダはあまり好みでないので、少なめでお願いした。

どちらのカツも肉が薄めで、きめ細かいパン粉をまとっているので、揚げ時間も短いのだろう、すぐに運ばれてきた。丼物は、蓋を取る瞬間のこのワクワク感も好きだ。ふわっと立ち上る揚げ物とソースの香りで、空腹MAXの私は悶絶せんばかり。

カツ丼、ビーフカツ丼共に、ご飯の上にカツが3枚載る。脂身が少なく、ごくごく細かい揚げ衣のカツなので衣と肉に一体感があり、さくさくっと歯に馴染む。油を吸った衣のどっしりと重たい感じがないので、一枚がするりとお腹が収まってしまう軽やかさだ。

DSC_0285
同じくその形状ゆえ、粘度の低いシャバシャバ系のソースの染み込み具合も良いいのだが、このソースの味も決め手で、香味野菜の風味こそ豊かだが、あっさりさらりとしているので、カツが浸っていようとも、ちっともくどさを感じない。このパウダー状の細かなパン粉と、ソースの風味なくしては、「ヨーロッパ軒総本店」さんのカツ丼を語るのは難しかろう。

ビーフカツ丼
DSC_0283
ビーフカツも、短時間で火が通っているので肉が柔らかくて、箸で簡単にちぎれるくらいだ。豚肉よりも肉の甘みが少ない分、ソースの深みと相まって武骨でダンディな味わい。ご飯が進むのは間違いないが、こちらは単品でビールとつまむんでも抜群の相性かも。

創業当時の日本では豚肉を食べる習慣があまりなかったため、こちらのお店も当初は牛カツから始まったのだとか。メニューに牛のキャラクターが描かれているのは、そんな由来からだそう。
DSC_0287

そして!カツ丼の重要な相棒である、福井のいちほまれのご飯が、とびきり美味しい。艶々のいちほまれは前述の「ゆきとら」さんで体験済みだったが、
改めてその旨さを実感した。私はとりたてて米食いでもなく、この舌で米の銘柄の区別がつくかも怪しいくらいなのだが、カツ丼自体の旨さと同じくらい、お米の旨さにも感動して、激しく同意を求めては同行者にうるさがられた。

丼物はご飯の盛りが良いものが多いので、
配分を間違えて残ってしまったご飯を持て余すこともある私なのだが、ソースの染みている部分も、真っ白な米粒部分も、それはそれは美味しく頂いた。
 
とにもかくにも、カツ、ソース、ご飯のどれもが秀逸な上に、バランスもが素晴らしいこのカツ丼、旨さに夢中でかき込んでいるうちに、気が付いたら食べ終えてしまうこと必至だ。この軽やかさは他のお客さんも承知しているようで、カツ丼だけでなく、季節柄美味しい牡蠣フライや、エビフライなどの単品を追加している方も多かった。ソース味カツという名前でカツ単品もあったので、私も食べ終えてしまう前に追加しておけばよかった・・・。

心理的満足度は高かったのに、どこに入ったのかわからないくらいするっとお腹に収まってしまったので、帰り道の福井城址のお堀を歩きながら、また食べたくなってしまって、困った。
DSC_0282
 
ところで、一定額以上のサービスとして、お会計の際にこちらのソースの小瓶をお土産にもらえた。秘伝のソースをこんなに簡単にサービスしてくれるなんてうれしい!しかし、このソースを使って自分でソースカツ丼もどきを作ってみても、当然ながら同じにはならない。あのパン粉、あのお米あってこその味なのだ。

帰ってきてからもいよいよあの味を舌が求めるので、もう一度
ソースカツ丼を食べるために福井駅に降り立ってもいいなぁ・・・なんて思っている。ごちそうさまでした。

ヨーロッパ軒 総本店かつ丼・かつ重 / 福井城址大名町駅仁愛女子高校駅足羽山公園口駅
昼総合点★★★★ 4.0

福井県勝山市「平泉寺のソフトクリーム屋さん」~思わぬところでNo.1に遭遇~

平泉寺白山神社からの帰りに、これまた同行者の希望で、白山神社バス停近くにある「平泉寺のソフトクリーム屋さん」に立ち寄る。こんなところに、と思うような場所にあるお店だが、ガイドブックにもしっかり掲載されていた。

◆山ぶどうソフトクリーム
DSC_0280
ソフトクリームはあまり好きじゃないので興が乗らなかったが、一口食べてみたら美味しくて驚いた。
ソフトクリームにはそぐわない表現なようだが、瑞々しいのだ。ジャージー種牛乳100%というソフトクリームは、ミルク味は濃いけれど甘さは控えめ。舌にまとわりつくしつこさがないので、後口もさっぱりしている。我が街西荻窪「ぼぼり」さんのアイスを思い出した。

トッピングも各種ソースや小豆など色々あるようだが、
頂いた山ぶどうソースは、甘酸っぱさがこれまたミルク味と相性が良くて気に入った。めったにソフトクリームを食べないので比較対象が乏しいのだが、No.1をつけてもいいんじゃないか。もっと気温の高い日だったら、私も迷わず自分の分を買っていただろう。

なんだかんだと境内を結構
歩き回って程よく疲れていたので、心地よい甘さが染みて癒された。
ごちそうさまでした。

平泉寺のソフトクリーム屋さんアイスクリーム / 勝山駅) 

昼総合点★★★☆☆ 3.5